タイ語を使って仕事がしたいという方から、質問をいただきました。
(日本在住)
前回の実用タイ語検定2級の試験は、残念ながら60点台前半で不合格でした。
今年再チャレンジする予定です。
余裕があれば、通訳案内士も受けてみようと思います。
そこで質問させてください。
- 準2級レベルでも何とかなるものでしょうか。
- 通訳派遣会社に登録する以外の方法はありますでしょうか。
- 通訳をする上で、実用タイ語検定と通訳案内士のどちらが有利でしょうか。
正直、お答えするのが難しい質問で、どの程度お話しできるか、かなり悩みました…
可能な範囲で、と言うことになりますが、今回は、いただいたこちらのご質問へのお返事になるような記事を書いていきます。
ご質問者様は「通訳」の仕事を希望されているようですが、今回はもう少し間口を広げて「タイ語を使って仕事をする」ことを念頭にお答えしていきます。
具体的には、
- タイ語を使って仕事をするのに必要な語学レベルとは?
- 日本でタイ語の仕事をするなら、どの資格を持っているのが有利なのか?
- クラウドソーシングを使って仕事を見つける方法
この3点について見ていきます。
③はフリーランスとしての働き方にも通ずるように思います。
では、はじめます。
タイ語を使って仕事がしたい方へのアドバイス①|必要な語学レベルとは?
仕事に必要なタイ語レベル|実用タイ語検定準2級で仕事ができるのか?
まずはじめに、「準2級レベルでも何とかなるか」という質問。
これは、正直言って、これだけの情報では判断できません。
なぜか?
それは、「実用タイ語検定準2級持ってます」という情報だけでは、会話(スピーキング)のレベルが判断できないからです。
(実用タイ語検定準2級試験は、二次面接試験がありません)
実際に、実用タイ語検定2級(1・2級は二次面接がある)を持っていなくても通訳の仕事をしている方を複数名知っています。
ただ、その方々に共通して言えることは、タイ人とちゃんとタイ語でコミュニケーションできるスピーキング(+リスニング)能力があるということです。
要は実力の世界です。
検定試験などの資格は、「自分にどんな能力があるのか」を、初対面の相手の方に端的に伝える手段という側面があります。
試験結果を提示できるのが分かりやすいことは間違いないので、資格として持っておくことに異論はありません。
ですが、必ずしもその人の「その時点の」実力を表しているとは限らないため、能力があるなら、資格の有無はそこまで気にしなくていいのかなと。
通訳を目指すのであれば、「タイ人とのやり取りが問題なく行える能力が自分にはあるのか?」ということについて、一度考えてみると良いと思います。
そして、自分が希望する職種での仕事経験がある場合、資格よりも、その経験の方が優先される傾向があるように思います。
具体的には、通訳・翻訳の仕事を希望する場合、通訳・翻訳経験がある場合は、その経歴・実績を聞かれることの方が多いように感じています。
資格の話は、次の項目とも関連しますので、一旦区切って次へ進みます。
タイ語を使って仕事がしたい方へのアドバイス②|どの資格を持っているのが有利なのか?
続いては、こちらの「どの資格を持っているのが有利なのか」という質問。
タイ語を学習されている方からよく聞かれるのが、
といった質問です。
先に結論(私なりの考え)をお伝えすると、
- 実力勝負の世界、かつ受け手の認知度次第なので、
極論を言うと、資格の有利/不利はない※ただし「全国通訳案内士」を除く
ということです。
要は受け手次第である、というのが大原則ですが、若干例外もあると思っているので、それを順にご説明します。
タイ語の有利な資格とは?|本帰国してからの私の体験談
ここで、少し私自身の体験談をご紹介します。
本帰国してすぐの頃の話です。
本帰国した時点で、私が保有していたタイ語関係の資格(と言えそうなもの)は、以下の3点でした。
- タイ語検定2級
- チュラロンコン大学インテンシブタイ卒業
- Thai Competency Test(旧ポーホック)Level 5
この3点を提示(提出)する機会が何度かあったのですが、その時いただいた反応は、それぞれでした。
例えば、
(タイ人)
(日本人)
このような反応でした。

ここから見えてくるのは、受け手がその資格(のレベル)をどれだけ知っているかということ。
タイ人の大学の先生は、チュラのインテンシブタイのコースのことをご存じでしたので、私がインテンシブタイを卒業している、と聞いて、私のタイ語のレベルを認識していただけたようでした。
一方、仕事関係の方は、タイ在住経験がある方でポーホックのレベル感をご存じだったので、このように質問されたわけです。
このケースはお二方ともタイに関係のある方でしたので、「チュラ」や「ポーホック」というキーワードで理解してもらえました。
そうではない方の場合(例えば多言語を扱う会社の人事担当者等)、このキーワードは恐らく意味をなさず、「タイ語検定試験〇級」という情報の方が、他の言語にもある「外国語の検定試験」という共通事項から語学レベルを推測しやすいので、理解してもらいやすいのではないかと。
その場合は、実用タイ語検定試験の方が、「ポーホック」や「チュラ卒業」よりも役に立ちますよね。

ボランティアに申し込む際の必要な資格について、ご紹介しています。
続いて、「通訳案内士(今の正式名称は「全国通訳案内士」)」が例外というのはどういうことか、という話をします。
タイ語の有利な資格|持っておいて損はない国家資格「全国通訳案内士」
全国通訳案内士は国家資格です。
日本でガイド関係の仕事をしたいと考えている方は、持っておいて損はない資格だと感じています。
レベル感などは、『実用タイ語検定1級・2級と通訳案内士試験の難易度比較&2級合格の対策』の中で比較・考察していますので、そちらをご覧ください。
(通訳案内士一次試験の過去問も記事内のリンクから閲覧可能です。)

一方、法律上は、2018年1月の法改正で、日本国内で有償で観光案内を行う場合に、必ずしも資格(通訳案内士)が必要ではなくなりました。
通訳ガイド制度について、改正通訳案内士法が平成30年1月4日に施行されました。
通訳案内士の名称が「全国通訳案内士」となるほか、通訳案内士の業務独占規制が廃止され、資格を有さない方であっても、有償で通訳案内業務を行えるようになるなど、通訳案内士制度が大きく変わりました。出所:観光庁ウェブサイト(http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kokusai/tsuyaku.html)
とはいっても、「全国通訳案内士」という資格自体がなくなるわけではありません。
この資格は、旅行業界では圧倒的な知名度がある資格ですし、法改正が行われて誰でも有償でのガイド業務ができるようになっても、「より信頼できる人材」を選ぶ手段として、ひき続きこの「全国通訳案内士」という資格が活用されるのではないかと、私個人は感じています。
「全国通訳案内士」の資格を持っている
=語学能力はもちろん、地理・歴史・通訳案内実務の基礎知識について、一定レベルの知識がある
と一般的には認知されていますので、雇い主側から見ると、ガイド業務を依頼しやすいですよね。
また、全国通訳案内士の言語は、全部で10言語(英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語)ありますが、タイ語の有資格者は少ないので、希少性があります。
全部で150名ほどの研修だったのですが、タイ語で参加しているのは私1人でした。
めずらしいようで、他の言語の通訳案内士の方と話しても、びっくりされることが多かったです。
タイ語を使って仕事がしたい方へのアドバイス③|クラウドソーシングを使って仕事を見つける方法
具体的にどのように仕事を見つけるか、という話に進みます。
いわゆる一般的な就職活動のように、求人情報をチェックしたり、人材を募集している通訳・翻訳会社に登録したりと、色々な手段があると思います。
また、今はネットでいろいろなことができる時代ですから、クラウドソーシング(発注者が、業務の受注者をインターネット上で見つけて、依頼する仕組み)でも、タイ語関係の仕事を探すことができます。
英語などのメジャーな言語に比べると、どうしても全体量が少ない印象はありますが、それでもタイミングがあえば試してみる価値はあります。
(後述する「Conyac」というサイトです)
当時は「タイ語を使って仕事をしたい」と思ったものの、未経験の状態でしたので、すぐに仕事をもらえる状況ではありませんでした。
そのような状態で仕事をさせてもらえたので(ちょうど大型案件があって、タイミングが良かったこともありますが)有難かったです。
今回は、クラウドソーシング事業を行っている会社で、タイ語関係の仕事がある4社と、マッチングガイドサービスを提供している2社をご紹介します。
タイ語・タイ関係の業務がある、クラウドソーシング4社
Conyac/コニャック
\TRY NOW/
前述の通り、私が最初に引き受けた仕事は、この「コニャック」というクラウド翻訳サービスでの翻訳業務でした。
当時はタイから帰国してすぐの頃で、自分の能力で仕事ができるのかどうかが、よくわからない(つまり、自分の能力に自信が持てない)時期でした。
そういった状況だったのですが、たまたまチェックしたこちらのコニャックで、ちょうど大型翻訳案件(日本語→タイ語)がありました。
私にできるだろうか…
という不安な気持ちは勿論あったのですが、当時は仕事を選べるような状況ではなかったのと、「正式採用の前にトライアル試験を行い、その内容で採用可否を決める」とあったので、
と思い応募したのがきっかけでした。
結果、トライアル試験を通過し、仕事をさせてもらったのが始まりです。
この仕事の経験が、間接的に今に繋がっているように思うと、どんなことでも試してみる価値はあるのかなと。
「クラウドワークス
(「この仕事気になる!」と思った案件に限って、タイミングが合わなかったり、忙しかったりするんですよね…)
もっと早く知っていたらなぁ…と思ったサービスです。
クラウドワークスやランサーズですと、通訳・翻訳案件だけではなく、もう少し幅広い視点で見てライター案件なども、未経験の仕事としては適しているのかなとも思います。
まずは一度登録してみることをおすすめします。
Crowdworks/クラウドワークス
\TRY NOW/
会員登録数100万人超
Lancers/ランサーズ
\TRY NOW/
YAQ/訳す
YAQSは、多言語に対応したクラウド翻訳サービスです。
翻訳者としての登録を希望する場合は、翻訳試験を受ける必要があります。
試験結果に応じレベル判定が行われ(レベルに応じて単価が変わる)、試験合格者のみが翻訳者として登録される仕組みです。
タイ語翻訳者枠もあります。
\TRY NOW/
語学・翻訳関係の出品ができるフリーマーケット
coconala/ココナラ
ココナラは、知識・スキル・経験を売り買いできるフリーマーケットです。
先ほど挙げたクラウドソーシングとは少し形態が異なりますが、「ココナラ」では、フリマ形式で、知識やサービスを出品することができます。
似顔絵やイラストのイメージが強いですが、語学・翻訳関係のサービスも出品されていますので、こういうプラットフォームを使って仕事をはじめるのも一つの方法かと思います。
\TRY NOW/
マッチングガイドサービスを提供している2社
先日、通訳案内士向けの説明会に参加した際に、このようなサービスがあることを知りました。
面白そうだと思ったのは、
✔︎Huber(ハバー)のガイドマッチングサービス
「トモダチガイド」✔︎otomoのプライベートツアーサービス
— Sripasa (@sripasaa) 2019年2月20日
個人対個人のガイドサービスです。
登録すると、マッチングしてくれて、自分が提供できるガイドサービスに合うゲストが紹介されるという仕組み。
有償です。ボランティアではありません。
先程お伝えしたとおり、法律が改正されて、日本で有償で観光案内を行う場合に、資格が不要になったんですよね。
物理的には誰でも有償でガイドをすることが可能になりました。
もちろん、ガイドをする場合は、場所の下調べや下見などがマストですから、そういうことができる方に限りますが、選択肢の一つとして頭に入れておくと良いのかなと。
Huber(ハバー)のガイドマッチングサービス
\TRY NOW/
otomoのプライベートツアーサービス
\TRY NOW/
私自身も先日知ったばかりのサービスでまだ未体験ですが、ガイドの仕事を試してみたい、という方にはアリかなと感じています。
クラウドソーシングで仕事を受けるメリット
クラウドソーシングで仕事を受けることについて、色々な評判がありますよね。
良い評判もそうでないもの(単価が安いなど…)もあると思いますが、ポイントは「どう活用するか」ということではないかと。
仕事のとっかかりとしては、非常に始めやすい仕組みだと思います。
そして、クラウドソーシングで仕事を請け負う最大のメリットは、評価が第三者から見えることだと思っています。
あるクライアントとの間で積み上がった信頼が、他の人にも見てもらえるということ。
これは、個人で働く人にとっては、有難いデータになっていくと思うんです。
タイ語関係の仕事の全体量がどこも少なめなのがやや残念ではありますが、どのサイトも登録は無料ですので、まずは登録してどんな案件があるかチェックしてみると良いと思います。
さいごに|個人で働くということ
最初の質問に戻ります。
通訳としてタイ語を使って仕事がしたいというご質問でした。
もちろん、会社に所属して通訳として働く選択肢もあると思いますが、個人事業主としてフリーで仕事を請け負う形もあります。
その場合、食べていけるほどコンスタントに仕事を受けるのは、そんなに簡単な話ではありません。
タイ語に限らず、フリーランス全般に言えることでしょうが、会社の看板無しで仕事をしていくのは大変なことです。
質問者様は会社を辞めて通訳になることを想定されているようですが、すぐに仕事が見つかればいいですが、こればかりは分かりません。
そのため、私個人の意見として申し上げたいのは、フリーになる前に、
- 最低でも1年間(心配な方は+α)は、仕事がなくても生活していけるだけの資金を貯える
- 国家資格「全国通訳案内士」を取得する
- 実用タイ語検定2級に合格する(ほどの実力を身につける)
最低でもこのどれかを完了させた上で会社を辞めた方が、辞めた後のリスクが減ると思います。
副業OKの会社であれば、専業ではなくまずは副業から始めてみるのも良いと思います。
引き受けられる仕事量が減ってしまうものの、気軽に始められますので。
最後に、今回お話したことを纏めた上で、質問者様に回答するとすれば、以下の通りとなります。
- 準2級レベルでも何とかなるものでしょうか。
⇒本人の実力次第です。
特に通訳は会話能力が求められますので、スピーキング・リスニング能力と、関係する業種の知識が備わっていれば、十分に仕事ができるかと思います。 - 通訳派遣会社に登録する以外の方法はありますでしょうか。
⇒クラウドソーシングで仕事を探す方法をご紹介しました。
他の言語に比べると全体量は少ないですが、まずは登録して、どういった仕事があるのかを検索してみることをおすすめします。 - 通訳をする上で、実用タイ語検定と通訳案内士のどちらが有利でしょうか。
⇒日本でのガイドの仕事を少しでも考えているなら、全国通訳案内士の資格が有利かと思います。
前述の通り、語学能力を証明できる国家資格ですから、持っていて損はありません。
(勿論、簡単な試験ではありませんが、それだけ希少価値があるということです)
今回のお返事が何かしらの参考になれば幸いです。
以上、Sripasa(@Sripasaa)でした。


