自分の名前や地名など、日本語の固有名詞をタイ文字で表記しようと思った時に、どのタイ文字を使えば良いか知りたいことってありますよね。
本記事では、そんな日本語の固有名詞をタイ文字で表す際のポイントをご紹介します。
ルールと言うほど縛られた(=絶対的な)ものではないため、厳密には人によって書き方が異なることもあり、「表記ゆれ」が存在します。
ですが、「一般的には、こう表記されることが多いよ」という実例をもとに、パターンを整理してポイントをまとめてみました。
では、はじめます。
日本語の五十音のタイ文字表記一覧表(+濁音・半濁音)
日本語の50音に濁音(バ行など)、半濁音(パ行)を加えた、日本語の各文字をタイ文字で表すとどのようになるか、一覧表にまとめました。
詳細は後述しますが、文字によっては、単語の始めに来るか、途中に来るか、最後に来るかで表記が変わりますので、各文字について
語中
語末
の3種類載せております。
あ行 | あ | い | う | え | お |
語頭 語中 語末 | อา อา อะ | อิ อิ อิ | อุ อุ อุ | เอ เอ เอะ | โอ โอ โอะ |
か行 | か | き | く | け | こ |
語頭 語中 語末 | คา กา กะ | คิ กิ กิ | คุ กุ กุ | เค เก เกะ | โค โก โกะ |
さ行 | さ | し | す | せ | そ |
語頭 語中 語末 | ซา ซา ซะ | ชิ ชิ ชิ | ซุ/ซู ซุ/ซู ซุ | เซ เซ เซะ | โซ โซ โซะ |
た行 | た | ち | つ | て | と |
語頭 語中 語末 | ทา ตา ตะ | ชิ ชิ/จิ ชิ/จิ | สึ ทสึ/ตสึ สึ | เท เต เตะ | โท โต โตะ |
な行 | な | に | ぬ | ね | の |
語頭 語中 語末 | นา นา นะ | นิ นิ นิ | นุ นุ นุ | เน เน เนะ | โน โน โนะ |
は行 | は | ひ | ふ | へ | ほ |
語頭 語中 語末 | ฮา ฮา ฮะ | ฮิ ฮิ ฮิ | ฟุ/ฟู ฟุ ฟุ | เฮ เฮ เฮะ | โฮ โฮ โฮะ |
ま行 | ま | み | む | め | も |
語頭 語中 語末 | มา มา มะ | มิ มิ มิ | มุ มุ มุ | เม เม เมะ | โม โม โมะ |
や行 | や | – | ゆ | – | よ |
語頭 語中 語末 | ยา ยา ยะ | – | ยู ยู ยุ | – | โย โย โยะ |
ら行 | ら | り | る | れ | ろ |
語頭 語中 語末 | รา รา ระ | ริ ริ ริ | รุ รุ รุ | เร เร เระ | โร โร โระ |
わ行 | わ | – | を | – | ん |
語頭 語中 語末 | วา วา วะ | – | โอ โอ โอะ | – | น น น |
が行 | が | ぎ | ぐ | げ | ご |
語頭 語中 語末 | กา/งา กา/งา กะ/งะ | กิ/งิ กิ/งิ กิ/งิ | กุ/งุ กุ/งุ กุ/งุ | เก/เง เก/เง เกะ/เงะ | โก/โง โก/โง โกะ/โงะ |
ざ行 | ざ | じ | ず | ぜ | ぞ |
語頭 語中 語末 | ซา ซา ซะ | จิ จิ จิ | ซุ ซุ ซุ/สุ | เซ เซ เซะ | โซ โซ โซะ |
だ行 | だ | ぢ | づ | で | ど |
語頭 語中 語末 | ดา ดา ดะ | จิ จิ จิ | ซุ ซุ ซุ | เด เด เดะ | โด โด โดะ |
ば行 | ば | び | ぶ | べ | ぼ |
語頭 語中 語末 | บา บา บะ | บิ บิ บิ | บุ บุ บุ | เบ เบ เบะ | โบ โบ โบะ |
ぱ行 | ぱ | ぴ | ぷ | ぺ | ぽ |
語頭 語中 語末 | ปา ปา ปะ | ปิ ปิ ปิ | ปุ ปุ ปุ | เป เป เปะ | โป โป โปะ |
参考:山田均著『タイ語のかたち』p9、13(ただし子音字は、実態と照らし合わせ一部変更)
この表の中でポイントとなる部分について、詳しく見ていきます。
日本語の固有名詞をタイ文字で表す際のポイント
ポイント①カ行・タ行の子音には、どのタイ文字を使えばいい?
カ行(カ・キ・ク・ケ・コ)とタ行(タ・テ・ト)の子音は、語の始めに来る場合は「低子音字」、語の途中・末尾に来る場合は「中子音字」を用いることが多いです。
(カ行→ค(kh)、タ行→ท(th))
(カ行→ก(k)、タ行→ต(t))
いくつか固有名詞の例を挙げてみます。
- く→คุ(音は「khu/く」)
- ろ→โร(音は「roo/ろー」)
- き→กิ(音は「ki/き」)
語頭の「く」の子音には、低子音字の「ค(kh)」が用いられています。
一方、語末の「き」の子音には、中子音字の「ก(k)」が用いられていることが分かります。
- な→นา(音は「naa/なー」)
- か→กา(音は「kaa/かー」)
- じ→จิ(音は「ji/じ」)
- ま→มะ(音は「ma/ま」)
2文字目の「か」には、中子音字の「ก(k)」が用いられています。
- し→ชิ
※ポイント③ご参照 - ば→บา
- た→ตะ
ポイント②ア・エ・オの母音は、短母音or長母音?
ア段・エ段・オ段の母音は、語の始め・語の途中に来る場合、長母音を用いることが多いです。
語頭または語中に来る→長母音で表記
語末に来る→短母音で表記
- イ段・ウ段の母音の場合は、基本的に短母音表記となるものの、「す」や「ゆ」など、一部例外があります。
- 地名やブランド名などの固有名詞は、語末でも「長母音+声調(下声)」となることがあります(詳しくは後述)。
いくつか例を挙げてみます。
- た→ทา(音は「thaa/たー」)」
- な→นา(音は「naa/なー」)
- か→กะ(音は「ka/か」)
1文字目の「た」と2文字目の「な」に、長母音(า/aa)が用いられていることが分かります。
- え→เอ(音は「ʔee/えー」)
- な→นา(音は「naa/なー」)
- み→มิ(音は「mi/み」)
- ゆ→ยู(音は「yuu/ゆー」)
- ふ→ฟุ(音は「fu/ふ」)
- い→อิ(音は「i/い」)
- ん→น(音は「n/ん」)
ポイント③「し」の子音に用いるタイ文字
日本語の「し」は、高い確率で「ชิ(ち)」になります。
- 手越:เทโกชิ
- 静岡:ชิซุโอกะ
ポイント④「は行」の子音に用いる文字と、例外的な「ふ」の子音
「は行」のうち、「ふ」以外の「は、ひ、へ、ほ」に用いる子音は、「ฮ(h)」です。
「ふ」は、「ฟ(f)」を用います。
高子音字の「ห(h)」や「ฝ(f)」ではないところがポイントです。
- 福岡:ฟุกุโอกะ
ポイント⑤タイ文字で「つ」の表記の仕方【例外】
日本語の「つ」の音は、タイ語にはありません。
表記をする場合は、少し特殊な書き方をします。
具体例を挙げてみます。
タイにも進出したドラッグストアのマツモトキヨシ。
タイ文字で書くとこうなります。
- มัทสึโมโตะ คิโยชิマツモトキヨシ
Matsumoto Kiyoshi
「マツ/matsu」の部分が「มัทสึ」と書かれています。
「マ/ma」の「a」の音が短母音で「มั」、「ツ/tsu」が「ทสึ」と、アルファベットに近い形で表記されています。
「つ」が用いられる他の単語の例も挙げてみます。
- 草津:คุซัทสึ(またはคุซัตสึ)
- つじ田:ทสึจิตะ
なお、「つ」の表記については、「สึ」のみで表記されることもあり、ケースバイケースと言えそうです。
- 椿:สึบากิ
- 唐津:คาราสึ
ポイント⑥「す」と「ず」はタイ文字で同じ表記に
先ほど載せた50音の一覧表を見ていただくとわかりますが、「す」と「ず」、そして「づ」をタイ文字で表すと同じ書き方となります。
タイでもよく知られた自動車メーカー2社の名前。
- ซูซูกิ:スズキ(SUZUKI)
- อีซูซุ:いすゞ(ISUZU)
スズキといすゞ、どちらにも「すず」という音が入っています。
この「す」と「ず」には、同じ文字「ซ」が使われています。
これらの音は、タイ人にとっては同じ音に聞こえる、ということでもあります。
日本語を勉強しているタイ人にとって難しいのが、この「す」「ず」「づ」(そして「つ」も)の音の区別なんですよね。
拗音(「ャ」「ュ」「ョ」のつく音)のタイ文字での表記の仕方
日本語には、拗音ど呼ばれる、「ニャ」「ニュ」「ニョ」などの小さな「ャ」「ュ」「ョ」のつく音が多数あります。
一方、タイ語にこういった音は存在しないため、タイ文字を使って表記する場合は、このようになります。
- ャ→เีย(ia/イア)
- ュ→ิว(iu/イウ)
- ョ→เิยว(iao/イアオ)
- ミャ→เมีย(ミア)
- ミュ→มิว(ミウ)
- ミョ→เมียว(ミアオ)
東京がโตเกียว(tookiao)、京都がเกียวโต(kiaotoo)となります。
ただし、ジャ・ジュ・ジョ、チャ・チュ・チョは、母音「ア、ウ、オ」を用いて表記します。
- ジャ→จะ
- ジュ→จุ
- ジョ→จะ
- チャ→ชะ
- チュ→ชุ
- チョ→โชะ
単語の最後を強く発音することも(ブランド名・地名)
これは英語からの外来語全般に言えることですが、2音節以上で構成される単語の場合、最後の文節にストレス(強勢アクセント)を置くことが多いです。
英語からの外来語の例で見てみます。
(taxi/タクシー)
(apple/りんご)
(copy/コピー)
どれも、後ろにアクセントが置かれていることが分かります。
これと同じ話が、日本語からの外来語にもあります。
特に、日本のブランド名や日本の地名で同様の現象が起こっています。
例えば、
- โตโยต้า(tooyootâa):トヨタ
- โซนี่(soonîi):ソニー
- ฮอนด้า(hɔɔndâa):ホンダ
- ทาคายาม่า(thaakhaayaamâa):高山
- นากาโน่(naakaanôo):長野
特徴的なのは、最後の音が長母音+声調(下声)となることです。
タイ人が「トヨター」「ホンダー」と、後ろにアクセントを置くのは、このことによります。
さいごに|日本の固有名詞(名前・地名)をタイ文字で表記する際のポイント
本記事では、日本人の名前や、日本の地名などをタイ文字で表記する際のポイントについて見てきました。
表記ゆれや例外も多く、絶対的な正解は無いのですが、「一般的にこう表記されることが多い」という傾向をまとめたものです。
ご自身や周りの方々のお名前、日本の地名を紹介する際などにお役立てください。
また、「タイ文字でどう書いたらいいか分からない」という日本の固有名詞が出てきた場合、おすすめは、自分が思いつくスペルを入力してGoogle検索をしてみることです。
そうすると、その固有名詞でよく使われているタイ語表記が検索結果に出てくるので、自分が知りたい固有名詞の表記方法(の一般的なもの)を知ることができます。
本記事は以上になります。