タイ語語源

【タイ語】「文化/culture」を意味する単語「วัฒนธรรม(ワッタナタム)」の語源

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本記事では、タイ語で「文化」を意味する単語「วัฒนธรรม(ワッタナタム/wátthaná-tham)」の語源について見ていきます。

先にポイントをお伝えします。

本記事のポイント

  • วัฒนธรรม(ワッタナタム)は、cultureの訳語として制定された造語
  • 当初は別の語が制定されるも好んで用いられず、วัฒนธรรม(ワッタナタム)に変更したら定着した

では、詳しく見ていきます。

【参考】タイ語「วัฒนธรรม」の読み・意味・品詞
วัฒนธรรม
読み
※カタカナは参考程度
wátthaná-tham
ワッタナタム
วัฒนธรรม
音声
วัฒนธรรม
意味
文化
品詞名詞
原語パーリ語+サンスクリット語

※cultureの訳語として制定された造語

タイ語「วัฒนธรรม(ワッタナタム)」の語源

タイ語「วัฒนธรรม(ワッタナタム/wátthaná-tham)」は、パーリ語「vaḍḍhana-」とサンスクリット語「dharma-/ダルマ(धर्म-)」の2語から成る語です。

タイ語単語วัฒนธรรมの語源
  1. วัฒน-(繁栄、進歩)
    ←パーリ語「vaḍḍhana-」
  2. ธรรม(法、おきて、他)
    ←サンスクリット語「dharma-(धर्म-)」

それぞれの語の語源を見ていきます。

語源①「vaḍḍhana/ヴァッダナ」(パーリ語)

「วัฒนธรรม(ワッタナタム)」前半の「วัฒน-(ワッタナ/wátthaná):繁栄、進歩」は、「繁栄・進歩」などを意味するパーリ語「vaḍḍhana-」から来ています。

パーリ語「vaḍḍhana-」

パーリ語
単語
(読み)
vaḍḍhana-
(ヴァッダナ)
パーリ語
単語
(タイ文字
表記)
วฑฺฒน
意味繁栄、進歩、増栄、増大
品詞名詞

このパーリ語「vaḍḍhana-」は、タイ語「พัฒนา(phátthanaa/パッタナー):開発する/発展させる」の語源でもあります。

タイ語単語พัฒนาの語源

語源②「dharma-(धर्म-)」(サンスクリット語)

「วัฒนธรรม(ワッタナタム)」後半の「ธรรม(タム/tham):法・おきて」は、サンスクリット語「dharma-」から来ています。

サンスクリット語「dharma-」

単語
(デーヴァナーガリー文字)
धर्म-
単語
(読み)
dharma-
(ダルマ)

※dharman-と表記されることも
単語
(タイ文字
表記)
ธรฺม
意味法、おきて
品詞名詞

あと、この件を調べていて知ったのが、タイ語ธรรม(tham、thamma-)の語源のサンスクリット語dharma-(धर्म-)が、日本語のだるま/達磨とも繋がっているということです。



วัฒนธรรม(ワッタナタム)はタイの造語

cultureの訳語として制定されたวัฒนธรรม

วัฒนธรรมはcultureの訳語として制定された造語です。

当初はพฤทธิธรรม(プルッティタム/phrɨ́tthí-tham)という語が制定されましたが、音がタイ語のリズムに合わず好んで用いられなかったため、วัฒนธรรมに変更したら定着したとのこと。

当初制定された語「พฤทธิธรรม」も、วัฒนธรรม同様、次の2語で構成されていました。

【参考】พฤทธิธรรม(วัฒนธรรมの前身)の語源

  1. พฤทธิ์(繁栄、富裕)
    ←サンスクリット語「vṛddhi-(वृद्धि-)」
  2. ธรรม(法、おきて、他)
    ←サンスクリット語「dharma-(धर्म-)」

また、วัฒนธรรมはナラーティップポンプラパン親王(ワンワイタヤーコーン親王、ワラワン殿下とも)により制定された造語です。

ナラーティップポンプラパン親王により制定された造語(ศัพท์บัญญัติ)は、他にもประสิทธิภาพ、รัฐธรรมนูญ、นวัตกรรม、อุตสาหกรรมなど、数多くあります。

【参考】カンボジア語で「文化」を意味する語

タイの隣国カンボジアの言語であるカンボジア語(クメール語)も、タイ語と同様インド系言語であるパーリ語やサンスクリット語が由来の語が多数あります。

そこで、カンボジア語では「文化」を意味する語は何と言うか、調べてみました。

タイ語単語วัฒนธรรมの語源

カンボジア語で文化を意味する語は、វប្បធម៌(ヴォアパトア)です。

この語を分解すると、「(種を)播くべき、播種の」という意味のパーリ語「vappa-」と、サンスクリット語「dharma-」が語源になっています。

後半の「dharma-」はタイ語の語源と同じですが、前半はタイ語と異なる語が用いられていることが分かります。このことからも、タイ語「วัฒนธรรม」がタイで制定された造語という話の信憑性がより増すように思います。

【その他】サンスクリット/パーリ語の「व/v」→タイ語の「ว/w」&「พ/ph」に

サンスクリット/パーリ語の「व/v」はタイ語の「ว/w」に対応しているのですが、タイ語の「พ/ph」に置き換わることもあります

面白いのは「ว/w」と「พ/ph」どちらの語もタイ語に存在していたりすることです(その場合、その2語の語源は同じになります)。

วัฒน-とพัฒน-以外にもวิธี/พิธี、วิเศษ/พิเศษ、วรรค/พรรคなどがあります。



【まとめ】タイ語「วัฒนธรรม」の語源

本記事では、タイ語で「文化」を意味する単語「วัฒนธรรม(ワッタナタム/wátthaná-tham)」の語源について見てきました。

最後にまとめます。

本記事のまとめ

  • タイ語で文化を意味するวัฒนธรรมは、cultureの訳語としてパーリ語とサンスクリット語を組み合わせて造られた造語
  • 当初は別の語(พฤทธิธรรม)を用いていたが好まれずวัฒนธรรมに変更
  • ธรรมと達磨(だるま)が語源的には繋がっている
  • วัฒนธรรมのวัฒน-とพัฒนาの語源は同じパーリ語vaḍḍhana(ヴァッダナ)

本記事は以上になります。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

【参考サイト】

https://www.facebook.com/PhasaLaeWankamThai/posts/คำว่า-วัฒนธรรม-เดิมทรงบัญญัติไว้ว่า-พฤทธิธรรม-แต่คำนี้ไม่ติดเพราะไม่มีใครนิยมใช้/1694861840538246/

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参考文献/อ้างอิง
  • 冨田竹二郎編『タイ日大辞典』
  • 宇戸清治編『パスポート初級タイ語辞典』
  • พจนานุกรม ฉบับราชบัณฑิตยสถาน พ.ศ. ๒๕๕๔
    (書籍/無料アプリを利用)
  • 荻原雲来編纂『漢訳対照 梵和大辞典』
  • Monier-Williams : A Sanskrit-English Dictionary
    (通称『モニエル(辞典)』)
  • 雲井昭善著『新版 パーリ語佛教辞典』
  • 水野弘元著『増補改訂 パーリ語辞典』
  • 辻直四郎著『サンスクリット文法』
  • Jゴンダ:サンスクリット語初等文法
  • https://th.wiktionary.org/wiki/วิกิพจนานุกรม:หน้าหลัก(タイ語)
  • https://www.manduuka.net/sanskrit/index.htm