タイ語語源

【タイ語】「テレビ/TV」を意味する単語「โทรทัศน์(トーラタット)」の語源

タイ語 テレビ โทรทัศน์語源
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本記事では、タイ語で「テレビ」を意味する単語「โทรทัศน์(トーラタット/thoora-thát)」の語源について見ていきます。

先にポイントをお伝えします。

本記事のポイント

  • โทรทัศน์(トーラタット)は、「遠い」を意味するโทร-(トーラ)と、「見えること」などを意味するทัศน์(タット)からなる語
  • โทร-(thoora)はサンスクリット語dūra-(ドゥーラ)が、ทัศน์(thát)はサンスクリット語darśana-(ダルシャナ)とパーリ語dassana-(ダッサナ)が語源
  • โทรทัศน์はtelevisionの訳語として制定された語で、tele-とโทร-が、visionとทัศน์がそれぞれ対応している

では、詳しく見ていきます。

タイ語「โทรทัศน์」の読み・意味・品詞
โทรทัศน์
読み
※カタカナは参考程度
thoora-thát
トーラタット

※ทีวี(thii-wii/ティーウィー)とも
โทรทัศน์
意味
テレビ
品詞名詞
原語サンスクリット語+パーリ語

※televisionの訳語として制定された語

タイ語「โทรทัศน์(トーラタット)」の語源

タイ語「โทรทัศน์(トーラタット/thoora-thát)」は、「遠い」を意味するโทร-(トーラ/thoora)と、「見えること、見解」などを意味するทัศน์(タット/thát)からなる語。

語源は、サンスクリット語「dūra-/ドゥーラ(दूर-)」と、サンスクリット語「darśana-/ダルシャナ(दर्शन-)」とパーリ語「dassana-/ダッサナ」です。

タイ語 テレビ โทรทัศน์
  1. โทร-(遠い)
    ←サンスクリット語「dūra-/ドゥーラ(दूर-)」
  2. ทัศน์(見えること、見解、他)
    ←サンスクリット語「darśana-/ダルシャナ(दर्शन-)」、パーリ語「dassana-/ダッサナ」

それぞれの語の語源を見ていきます。

語源①「dūra-/ドゥーラ(दूर-)」(サンスクリット語)

「โทรทัศน์(トーラタット)」前半の「โทร-(トーラ/thoora)」は、「遠い」を意味するサンスクリット語「dūra-/ドゥーラ(दूर-)」から来ています。

サンスクリット語「dūra-」

サンスクリット語
単語
(読み)
दूर-
dūra-
(ドゥーラ)
サンスクリット語
単語
(タイ文字表記)
ทูร
意味遠い

サンスクリット語「dūra-(ドゥーラ)」の母音の音が「u」から「o」に変化してタイ語「โทร-(thoora/トーラ)」になっています。

※パーリ語にも「dūra-」という語がありますが(意味も同じ「遠い」)、タイ日大辞典やこちらの資料(タイ語)では「โทร-(トーラ/thoora)」はサンスクリット語由来の語とされており、それを受けて当サイト内でもサンスクリット語語源の語としています。

サンスクリット語・パーリ語の子音「d(サンスクリット語の子音字「द」)」は、タイ語(タイ文字)の「th(ท)」に対応しています(※対応関係がわかる一覧表はこちらからダウンロードしていただけます)。

サンスクリット語
パーリ語
d


タイ語(タイ文字)
th

語源②「darśana-/ダルシャナ(दर्शन-)」(サンスクリット語)、「dassana-/ダッサナ」(パーリ語)

「โทรทัศน์(トーラタット)」後半の「ทัศน์(タット/thát)」は、サンスクリット語「darśana-/ダルシャナ(दर्शन-)」とパーリ語「dassana-/ダッサナ」がその語源です。

サンスクリット語「darśana-」

単語
(デーヴァナーガリー文字)
दर्शन-
単語
(読み)
darśana-
(ダルシャナ)
単語
(タイ文字
表記)
ทรฺศน
意味見ること、観察、認識
品詞名詞

サンスクリット語darśana-(दर्शन-)を分解

darśana-(दर्शन-)「見ること」は、「見る」を意味する動詞(語根)√dṛś(दृश्/ドリシュ)に、名詞を作る接尾辞-anaが付加された語です。

darśana-(दर्शन-):見ること
=√dṛś(दृश्)+ ana

サンスクリット語
動詞(語根)
√dṛś(दृश्/ドリシュ)
:見る

名詞を作る接尾辞
ana

※√dṛśの後ろにanaが来ると、√dśの「」の音が「ar」に変化する。そのため、√dś+ana=dśana-ではなく「darśana-」となる

パーリ語「dassana-」

単語
(読み)
dassana-
(ダッサナ)
単語
(タイ文字
表記)
ทสฺสน
意味見、見解
品詞名詞

「ทัศน์(タット/thát)」は、その語形から見て、サンスクリット語とパーリ語を組み合わせて造られた語と言えます。

サンスクリット語「darśana-(ダルシャナ)」をタイ文字で表記すると本来は「ทรรศนะ」となるのですが(サンスクリット語で、rの後ろに子音字が続く場合、タイ語ではรร+子音字の表記となることが多い)、ทัศนという綴りになっているのはパーリ語「dassana-(ダッサナ)」の要素も入っていると言えます。

一方、パーリ語「dassana-」をタイ文字で表記するとทัสน(同じ子音字が続く場合、タイ語では一つは省略されることが多い)となりますが、これには「ศ」が含まれないため、やはりサンスクリット語とパーリ語を組み合わせた語と言えます。

そのためか、辞書(タイ日大辞典)でも語源のところが併記となっています。



โทรทัศน์(トーラタット)はtelevisionの訳語

televisionの訳語として制定されたโทรทัศน์

โทรทัศน์は英語televisionの訳語として制定された語(ศัพท์บัญญัติ/サップ・バンヤット)です。

【ศัพท์บัญญัติ(sàp-banyàt/サップ・バンヤット)】
:学術語や外国語の訳語として学士院などが策定した語

【บัญญัติศัพท์(banyàt-sàp/バンヤット・サップ)】
:外国語の術語などの訳語を制定すること

tele-とโทร-が、visionとทัศน์がそれぞれ対応関係にあります。

石井米雄先生のエッセイでも紹介されていましたが、英語televisionはギリシャ語で「遠方の」を意味する「tele-」とラテン語で「視覚」などを意味する「vision」が語源と言われており、意味も含めタイ語のโทร-(thoora)、ทัศน์(thát)と対応していることが見て取れます。

第24回 (2003年4月)

すっかり日本語になってしまった「ビデオ」と「オーディオ」。このふたつのことばの共通項は何でしょう。Video もaudioも、どれもラテン語の動詞形で、「わたしは見る」「私は聴く」という意味です。Video は変化して vis-という形でたくさん英語に入っています。まずvision 。もともと「視力」「視覚」という意味でしたが、「心に描く像」ということから「展望」となります。「政治家にはビジョンが必要だ」など、このことばは日本語でもそのまま使いますね。形容詞にしてvisible とすれば「目に見える、可視の」という意味。それに「遠方の」という意味のギリシャ語tele-をつければtelevision、おなじみの「テレビ」となります。ついでのことながら telephone はどうでしょう。Tele+phone。これはラテン語ではなくギリシャ語の方。Phone はもともと人間の「声」の意味から、一般に「音」をあらわすようになりました。と、ここまでいえば電話がtelephone である理由は説明不要でしょう。

神田外語大学 石井米雄 エッセイ 語源の楽しみ https://www.kandagaigo.ac.jp/kuis/essay/7695/

また、โทรทัศน์はナラーティップポンプラパン親王(ワンワイタヤーコーン親王、ワラワン殿下とも)により制定された造語とする資料もあります。

ナラーティップポンプラパン親王により制定された造語(ศัพท์บัญญัติ/サップ・バンヤット)は、他にもวัฒนธรรม、ประสิทธิภาพ、รัฐธรรมนูญ、นวัตกรรม、อุตสาหกรรมなど、数多くあります。

【参考】カンボジア語で「テレビ」を意味する語

タイの隣国カンボジアの言語であるカンボジア語(クメール語)も、タイ語と同様インド系言語であるパーリ語やサンスクリット語が由来の語が多数あります。

カンボジア語で「テレビ」を意味する語は「ទូរទស្សន៍(トゥールトゥォホ)」と言います。

タイ語 テレビ โทรทัศน์ カンボジア語 ទូរទស្សន៍

この語は、パーリ語「dūra-/ドゥーラ」と「dassana-/ダッサナ」が語源とされています。

興味深い点は、タイ語とは異なりカンボジア語の方は、前半の「ទូរ-(トゥール)」は原語の母音から音が変化せず「u(ウ)」が残っている点です。

このことから、タイ語が「ทูร-(thuura)」とならずに「โทร-(thoora)」になったのは、タイ側で起きた変化と言えそうです。



【まとめ】タイ語「โทรทัศน์(トーラタット)」の語源

本記事では、タイ語で「テレビ」を意味する単語「โทรทัศน์(トーラタット/thoora-thát)」の語源について見てきました。

最後にまとめます(冒頭で述べたポイントと同じ内容)。

本記事のまとめ【再掲】

  • โทรทัศน์(トーラタット)は、「遠い」を意味するโทร-(トーラ)と、「見えること」などを意味するทัศน์(タット)からなる語
  • โทร-(thoora)はサンスクリット語dūra-(ドゥーラ)が、ทัศน์(thát)はサンスクリット語darśana-(ダルシャナ)とパーリ語dassana-(ダッサナ)が語源
  • โทรทัศน์はtelevisionの訳語として制定された語で、tele-とโทร-が、visionとทัศน์がそれぞれ対応している

本記事は以上になります。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

【参考サイト】

http://legacy.orst.go.th/?knowledges=โทรทัศน์-กับ-กล้องโทรทรร

https://th.wikipedia.org/wiki/โทรทัศน์

https://th.wikipedia.org/wiki/พระเจ้าวรวงศ์เธอ_กรมหมื่นนราธิปพงศ์ประพันธ์

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