タイ語で「可愛い」を意味する言葉は、「ナーラッ(ク)(nâa-rák/น่ารัก)」です。
これは辞書にも出ていますのでよく知られた意味かと思いますが、実際にはこの「ナーラッ(ク)(nâa-rák/น่ารัก)」という言葉は、「(人柄が)いい人」といったニュアンスで用いられることが少なくないように感じます。
本記事ではそんな「ナーラッ(ク)/น่ารัก」の「可愛い」以外の意味について、掘り下げて見ていきます。
- 「ナーラッ(ク)(nâa-rák/น่ารัก)」の「可愛い」以外の意味
- 「ナーラッ(ク)(nâa-rák/น่ารัก)」が「可愛い」以外の意味で用いられている実例(著者の経験をもとに)
タイ語で「可愛い」を意味する「ナーラッ(ク)/น่ารัก」のもう一つの意味
「ナーラッ(ク)/น่ารัก」の2つの意味
「ナーラッ(ク)/น่ารัก」という言葉は、辞書で調べると「可愛い」という意味のみが掲載されていることがほとんどかと思います。
一方、実際にタイ語を使う場に身を置くと、大人に対して「ナーラッ(ク)/น่ารัก」という言葉を使うときは、「可愛い」ではなく「いい(人)」的な意味で使われる方が多いように感じています。
タイ人の友人に聞いてみた内容も踏まえ、以下のように整理してみます。
- 可愛い
【外見・見た目】 - (性格が)いい、優しい、(人助けが好きな)
【内面】
※相手の行為に対してそれを褒めるニュアンスを含む
※「ナーラッ(ク)/น่ารัก」を使う側は、相手の行為を好意的に受け止めており、賞賛の気持ちが込められている
では、この②の意味について、実際に私自身が見聞きした例をもとに見てみましょう。
「ナーラッ(ク)が「いい人」的な意味で使われていた例
「ナーラッ(ク)」が「可愛い」という意味ではなく、「いい(人)」的なニュアンスで使われていた例を挙げていきます。全部で4例あります。
【例文1】「田中さんは本当にいい人」
Tanaka-san nâa-rák caŋ ləəi
タナカサン ナーラッ(ク) ジャン・ルーイ
ทานากะซังน่ารักจังเลย
田中さんは本当にいい人(だ)
これは、私自身がタイで日本語ボランティアをしていた頃によく言われた言葉です(名前は変えています)。
【例文2】「ボランティアの皆さんはとてもいい人」
ʔaasǎasamàk thúk khon nâa-rák mâak
アーサーサマッ(ク)トゥッ(ク)コン ナーラッ(ク) マー(ク)
อาสาสมัครทุกคนน่ารักมาก
ボランティアの皆さんはとてもいい人(だ)
こちらも、日本語ボランティアのメンバー(私を含む)に対し、タイ人の方がよく言っていた一言です。
【例文3】「田中さんは私たちのいい先生です」
Tanaka-san pen khruu thîi nâa-rák khɔ̌ɔŋ phûak rao samə̌ə
タナカサン ペン クルー ティー ナーラッ(ク) コン(グ)プアク ラオ サムー
ทานากะซังเป็นครูที่น่ารักของพวกเราเสมอ
田中さんはいつも私たちのいい先生です(直訳)
こちらは、日本語を教えていた生徒さんとお別れするときに言われた言葉です。
【例文4】「プローイさんはとてもいい上司です」
これはタイドラマで出てきたセリフです。
部下が上司(プローイさん)について述べるシーンで、その部下が言った一言です。
sǎmràp phǒm phîi phlɔɔi pen câonaai thîi nâa-rák mâak mâak khráp
サムラップ ポム ピー・プローイ ペン ジャオナーイ ティー ナーラッ(ク) マー(ク)マー(ク) クラップ
สำหรับผม พี่พลอยเป็นเจ้านายที่น่ารักมาก ๆ ครับ
僕にとって、プローイさん(P’Ploy)はとてもいい上司です。
「ナーラッ(ク)/น่ารัก」の意味を考察
私自身、最初のころは「ナーラッ(ク)/น่ารัก」に「いい(人)」的な意味があることをちゃんと認識していなかったんですね(手持ちの辞書にも載っていませんでしたので)。
ですので、タイ人の友人から「ナーラッ(ク)/น่ารัก」なんて言われて、文字通り「可愛い」で受け取ってみていた時期もありました……
ですが、徐々に(わりと早い段階です……)「可愛い」と言われているわけではないことに気がつきました。
特に大人に対して「可愛い」を言うシチュエーションは、限られている(なかなかない)ように感じるんですよね(若者に対しては「可愛い」を使ってもアリだと思うので、ここでいう「大人」とは比較的年齢が上の方を指しています)。
ですので、大人に対して使われる「ナーラッ(ク)/น่ารัก」は、それが外見的に「可愛い」場合を除き、「人柄が良い(ใจดี/นิสัยดี(優しい、性格がいい)」という意味で用いられていると考えて良いのではないかと思います。
先ほど挙げた例文4例も、「可愛い」という意味で使われるケースもシチュエーションによってはゼロではないとは思います。
(「ボランティアのメンバーが全員見た目の可愛い方だった」とかも、物理的にはあり得るのかなと。)
ですが、実際に私に対して言ってもらった例を考えると、外見的な「可愛さ」ではなくボランティアや日本語を教えるという行為に対して言ってもらっていたことがわかるので、それをしてくれたことに対して「いい(人)」と見なした(見なしてくれた)と考えるほうが自然かな、と感じています。
一方、小さな子供(赤ちゃん)や動物、物に対して用いられる「ナーラッ(ク)/น่ารัก」は、日本語の「可愛い」という意味で用いられる、と考えて大丈夫かと思います。
【参考】「ナーラッ(ク)」という言葉を分解してみる
「ナーラッ(ク)」という語は「ナー」と「ラッ(ク)」、2つの語から成っています。
「ナー(nâa/น่า)」:〜すべき
「ラッ(ク)(rák/รัก)」:愛する(動詞)
「ナーラッ(ク)」を直訳すると「愛すべき」となります。
「ナー」は、その後ろに動詞や形容詞がついて、「〜すべき」という意味の語が作られます。
| 「ナー」+動詞(形容詞) | 意味 |
|---|---|
| ナー・パイ ※「パイ(pai/ไป)」:「行く(動詞)」 | 行くべき |
| ナー・キン(*) ※「キン(kin/กิน)」:「食べる(動詞)」 | 美味しそう ↑ (食べるべき) |
(*)「ナー・キン(nâakin/น่ากิน)」については、以下の記事の中でも詳しく解説しています。
タイ語で「おいしそう」と言う時は「น่ากิน/ナー・キン」それとも「น่าอร่อย/ナー・アロイ」?
まとめ|タイ語「ナーラッ(ク)/น่ารัก」の持つ2つの意味
本記事では、タイ語の「ナーラッ(ク)/น่ารัก」について、「可愛い」以外の意味について掘り下げて見てきました。
これまで見てきた内容を踏まえ、以下のように整理します。
- 可愛い
「外見的なかわいらしさ」
→主に小さな子供(赤ちゃん)、動物、物に対して用いる - (人柄が)いい、(性格が)いい、優しい
「内面の性格が良く、(相手から見て)賞賛されるべき行為を行ったことを踏まえた “いい(人)”」
→主に大人に対して用いる
本記事は以上となります。
ここまでお読みくださり有難うございます。
「ナーラッ(ク)」を使った例文について解説しています。
【第9回】「AはBである」という表現:『独学で勉強しよう!超初心者向けタイ語講座』
「ナー」を使った「美味しそう」という意味の「ナー・キン」と「ナー・アロイ」について解説しています。タイ語で「おいしそう」と言う時は「น่ากิน/ナー・キン」それとも「น่าอร่อย/ナー・アロイ」?



