先日視聴したタイ映画『Back to the 90s(2538 อัลเทอร์มาจีบ / 2538 アルター・マー・ジープ)』がとても面白かったのでご紹介します。
タイ映画『Back to the 90s』の概要とあらすじ
映画『Back to the 90s』の概要
映画タイトル (英語) | Back to the 90s |
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映画タイトル (タイ語) | 2538(*) อัลเทอร์มาจีบ (2538 アルター・マー・ジープ) |
映画公開年 | 2015年 |
視聴可能 | 【音声】タイ語 【字幕】タイ語・英語 ※一部の国のみ →2022年1月4日時点で、ネットフリックスでの配信は停止(または終了)しているようです |
(*)タイ語の映画タイトル内の数字「2538」は、仏暦での年号を表しています。
「仏暦-543年=西暦」
ですので、仏暦2538年-543年=西暦1995年となります。
仏暦については『タイ仏暦・西暦・和暦(元号)・十二支の早見変換一覧表』の中で詳しくご紹介しています。
映画『Back to the 90s』のあらすじ(ネタバレを含みます)
現代(2015年)の主人公ゴン(ก้อง / kɔ̂ɔŋ)が、20年前(1995年)にタイムスリップ(タイムトラベル)する映画。
タイプスリップするきっかけとなったのは、ゴンの自宅で急に鳴り出した古いポケベルでした。
そのポケベルを見つけたゴンは、ポケベルに書かれていた番号に公衆電話から電話してみることに。すると、そのまま1995年へタイムスリップします。
そして若い頃の父タム(ตั้ม / tâm)と母親メーム(แหม่ม /mæ̀æm)を見て気を失ってしまうゴン。
ゴンがタイムスリップしたのは、1995年当時の同じ場所(現在の自分の家の前)でした。
タムとタムの父(ゴンの祖父)の家に住まわせてもらうことになったゴン。
タムはバンド活動に精を出す大学生。タムの父はカセットテープ屋(歌手やバンドの曲が録音されたカセットテープを販売している)を営んでいます。
現代で両親の不仲を悲しく感じていたゴンは、後に自分の両親となるタムとメームの関係を良くしようと、色々と試みます。
当時タムに好意を寄せていた、タムの妹的な存在である女性ソムと関わるようになるゴン。やがてゴンはソムに惹かれていきます。
ゴンが現代で見つけた、タイムスリップするきっかけとなったポケベルに書かれた番号は、実はソムの電話番号だったのです。
しばらく1995年の世界にいたゴンは、その後一度現代(元の世界)に戻ってきます。そこでゴンは、ソムがバスの事故で亡くなっていたことを知ります。
ソムを助けるためにゴンは再び1995年へタイムスリップし、ソムに連絡を取ってソムがバスに乗らないようにしました。
そして再びゴンが現代に戻ると、仲の良い両親になっていました。
ゴンは昔のソムの番号に電話して、ソムが生きていることを確認したのでした。
ここで映画が終わります。
ストーリーの中で重要な要素となるのが、ポケベルです。
そこで、本映画に登場するポケベルがどのような使われ方をしているのか、という視点を踏まえ、タイのポケベルの歴史を見ていきます。
映画『Back to the 90s』にみる、タイでのポケベルの歴史
日本でもポケベルが流行った時期がありましたが、タイでもその時期があります。
タイでのポケベルの名称と、ポケベルが使われていた時期
タイ語でポケベルは『ページャー(เพอเจอร์またはเพจเจอร์)』と呼ばれています。
略してเพจ(ペー)と呼んだりも。
これはポケベルを意味する英語「pager/ページャー」から来ています。
ちなみに、『วิทยุติดตามตัว(ウィッタユ・ティッ(ト)ターム・トゥア)』という、タイ語本来の言い方もあります。
直訳すると「その人に随行する(その人を追い回す)ラジオ」といった意味になります。
タイでは、2520年(1977年)にポケベルのサービスが開始され、ポケベル全盛期(=好んで使われていた時期)は2530年(1987年)〜2544年(2001年)頃だったと言われています。
有名だったのはPaclink(แพคลิงก์またはแพ็คลิงค์、音は「ペックリン」が近いです)というポケベル通信サービス(当時の「DoCoMo/ドコモ」のような存在でしょうか)。
どこのサービスを使うかによって、メッセージを送る場合にかけるコールセンター番号が異なるのですが、Paclinkの場合は1144でした。
映画『Back to the 90s』に登場するのも、このPaclinkです。
参考文献(タイ語)
:https://th.wikipedia.org/wiki/วิทยุติดตามตัว
:『25 ข้อเกี่ยวกับ เพจเจอร์ สำหรับคนที่เกิดไม่ทันหรือไม่เคยรู้』(Pantipより)
昔のタイのポケベルのCM
今回、タイのポケベルについての記事を書くにあたりネットで色々調べていたら、タイの古いポケベルのCMに出会いました。
古いCM自体あまり見る機会がないので面白いかな、と思います。
よかったら見てみてください。2種類あります。
(*)いつ頃のCMか書かれていないのですが、CMに登場するポケベルの日付を見ると「1994年」となっていますので、その頃のCMかな、と推察されます。
(*)「1997年頃のモトローラのポケベル」とのことなので、CMもその頃のものと推察されます。
- ページャー
(เพอเจอร์またはเพจเจอร์)
※略語は「เพจ(ペー)」 - ペックリン(Paclink)
(แพคลิงก์またはแพ็คลิงค์) - ウィッタユ・ティッ(ト)ターム・トゥア
(วิทยุติดตามตัว)
映画から読み解く、タイでのポケベルの仕組み(1995年頃)
さて、ここで映画『Back to the 90s』に実際に登場するシーンをもとに、1995年のタイでのポケベルの仕組みを見てみましょう(Paclinkのサービス)。
- メッセージを送りたい人が、Paclinkのコールセンター(交換台)に電話(番号は1144)
↓ - 交換台の担当者(交換手)に、メッセージ内容と相手の電話番号を口頭で伝える
↓ - そのメッセージがテキストになって相手のポケベルに届く
面白いのが、②の「メッセージの内容を口頭で伝える」という部分です。
内容を口頭で伝えなくちゃいけないのって、結構恥ずかしいかなと思ったりするのですが……
日本だと(著者の知っているポケベルは)数字を打つと定型のメッセージに変換されたり、数字の組み合わせでカタカナ(50音)が入力でき、プッシュ式の電話からであればメッセージの送信者本人から、メッセージの受取人(相手)に直接メッセージを送ることができました(1996~1997年頃)。
ですが、タイだと(恐らくタイ語/タイ文字の性質が要因だと思うのですが)数字の組み合わせでは全ての子音字・母音符号・声調符号を表せない(足りない)ため、交換台(交換手)が必要だったのかな、と感じました。
映画『Back to the 90s』の中でも、交換手とやり取りするシーンが何度か登場します。
うまく聞き取ってもらえず何度も言い直したり、ラブラブなやり取りだと恥ずかしがりながらその内容を伝えたり、伝える内容を決めずに交換台に電話するからか途中で何度もメッセージを言い変えたりと、非常に面白いやり取りになっており、見どころの一つかと思います。
さいごに|タイ映画『Back to the 90s』は面白い
本記事では、タイ映画『Back to the 90s』と、映画に登場するポケベルについて、タイでの仕組みなどをご紹介しました。
2022年1月時点では本映画がネトフリで配信されていないのですが、もし視聴可能な機会があればぜひ見ていただきたい、おすすめの映画です。
本記事は以上になります。