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【タイ語】クレット島(Koh Kret)の名前の由来(語源)と歴史を紐解いてみる

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本記事では、タイのノンタブリー県にあるクレット島(เกาะเกร็ดコ・クレット/Koh Kret)について、その名称の由来とそれに関連した歴史を紐解いて見ていきます。

この記事でわかること

クレット島の歴史

クレット島(เกาะเกร็ดコ・クレット)という名前の由来

※一部仮説を含みます

では、はじめます。

タイ・クレット島の歴史

クレット島の概要

クレット島は、バンコクの北に位置するノンタブリー(นนทบุรี)県パーク・クレット郡にある、面積約4㎢ほどの島です。

いつ「島」になったのか?

この島は、昔(元々)は島の形状をしておらず、細い水流のある広い土地でした。

この細い水流は、本流のチャオプラヤー川につながる近道で「トレット(เตร็ด/trèt)(*)」と呼ばれていました。

「トレット(เตร็ด/trèt)」とは、「河の本流の曲がった所を近道して結ぶ細い水流」を意味する語です。

(*)「トレット(เตร็ด/trèt)」は「トレート(เตรด/trèet)」とも。

その後、アユタヤ時代のプーミンタラーチャー王(*)治世下の西暦1722年、ジャンク船(=木造帆船)を航走しやすくする目的で、トレット(เตร็ด/trèt)を掘削して水流を広げ運河にしました。

(*)พระเจ้าท้ายสระ/サンペット9世、在位西暦1708年〜1732年

タイ・クレット島
地図を参考に著者が手書きで描いたイメージ図です(厳密には正確ではありません)



この運河はチャオプラヤー川の近道となるもので、คลองลัดเตร็ดน้อยクローン・ラット・トレット・ノーイ などと呼ばれました。

この運河ができたことで、元々島ではなかったこの土地が今日の島の形状になりました。

その後、水の流れにより運河の幅が広がっていき、現在は「แม่นำ้ลัดเกร็ดメーナーム・ラット・クレット」と呼ばれています(คลองลัดเกร็ดクローン・ラット・クレットとも)。

タイ・クレット島
地図を参考に著者が手書きで描いたイメージ図です(厳密には正確ではありません)


クレット島(เกาะเกร็ด)の名前の由来

モン人とクレット島

クレット島は、モン(Mon/มอญ)人が移り住んできた地域の一つです。

ごく簡単にですが、時系列順にまとめてみます。

西暦出来事
1757年ビルマ軍がモン(มอญ)人の首都(กรุงหงสาวดี)を占領する
1767年モン人の一部がチャオプラヤー河口付近に逃げてくる
1774年タークシン大王(トンブリー王朝、在位西暦1767年〜1782年)めいはからい)により、モン人がパーク・クレット(ปากเกร็ด)、コ・クレット(เกาะเกร็ด)に住居を構えることが許可される
1815年ラーマ2世(チャクリー王朝、在位西暦1809年〜1824年)治世下にも、モン人がさらにタイに逃れてきてクレット島に移り住むようになる

「クレット」の名前の由来と現在の意味

この土地に移住してきたモン人は、「เตร็ด(trèt/トレット)」のことを「เกร็ด(krèt/クレット)」と発音しました。

モン人のこの読み方が定着し、「クレット島(เกาะเกร็ด/kɔ̀ krèt/コ・クレット)」と呼ばれるようになっていきました。

今日では、「เกร็ด(krèt/クレット)」という語自体に「本流の2ヶ所を結ぶ近道の小水道」という意味があります(『タイ日大辞典』p184)

今回見てきた歴史を踏まえると、以下のように考察できるのではないかと考えています。

เตร็ด(トレット)とเกร็ด(クレット)

元々「เตร็ดトレット(trèt)または เตรดトレート(trèet)」という語があった
 ↓
モン人がこの地域に移り住む
 ↓
モン人の発音により「เกร็ดクレット(krèt)」が定着する
 ↓
เกร็ดクレット(krèt)」がこの島の名称になり、「เกร็ดクレット(krèt)」という語が「เตร็ดトレット(trèt)」の持つ「本流の2ヶ所を結ぶ近道の小水道」という意味も持つように。

ここで気になるのが、「เตร็ดトレット(trèt)」の語源です。

辞書等に載っている話ではないため現在も仮説(可能性)の一つと思われますが、非常に興味深かった話がありましたのでご紹介します。

【仮説】「トレット(เตร็ด)」の語源

先ほどお話ししたとおり、「トレット(เตร็ด/trèt)」は「河の本流の曲がった所を近道して結ぶ細い水流」という意味の語です。

เตร็ดトレット(trèt)」は「เตรดトレート(trèet)」とも呼ばれていたと最初に述べましたが、「เตรดトレート(trèet)」の語源が「海峡」を意味する英語「straits(สเตรตส์/สเตรทส์)」かもしれない、という話(*)が(あくまで可能性の一つとして)あるようです。

(*)出所:https://th-th.facebook.com/1263989750282033/posts/1641023102578694/(タイ語)

タイ語「เตรดトレート」と英語「straits」の音が似ていること、「海峡」という「straits」の意味を考えても、「เตรดトレート(trèet)[เตร็ดトレット(trèt)]」の語源となったという話はあり得るのかな、と個人的には感じました。



さいごに|クレット島の名称の由来と歴史

タイ・クレット島
地図を参考に著者が手書きで描いたイメージ図です(厳密には正確ではありません)

本記事では、タイのクレット島の名前の由来(語源)と、クレット島とモン人についての歴史を見てきました。

言葉というのは歴史が反映されるので面白いですよね。

「トレット(เตร็ด/trèt)」の語源が大いに気になりますが、いつか解明されることを願って。

本記事は以上になります。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

参考文献(อ้างอิง)

https://adaybulletin.com/life-feature-koh-kret/19857(タイ語)

https://th-th.facebook.com/1263989750282033/posts/1641023102578694/(タイ語)

https://th.wikipedia.org/wiki/แม่น้ำลัดเกร็ด(タイ語)

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