タイ語作文添削

【第1回】タイ語作文添削「タイのポテサラ」

【第1回】タイ語作文添削byぱさたび
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トライアル的な試みとして行った、『ぱさたび』読者様向けのタイ語作文添削です。

第1回は、タイでのポテサラにまつわる話です。

『ぱさたび』読者様でタイ語を学習されている方から、こういった文章をお送りいただきました。

日本語原文

思い出

このポテサラが美味しすぎる。

温かいポテサラ。

滞在中3回も食べた。

タイのポテサラ
タイの “ポテサラ”
(画像は添削依頼者がご自身で撮影されたもの)

タイ語作文【添削前】

ความทรงจำ
khwaam soŋcam
クワーム ソン(グ)ジャム

สลัด มันฝรั่ง นี้ อร่อย มากเลย
salàt man faràŋ níi ʔarɔ̀i mâak ləəi
サラッ(ト) マン ファラン(グ) ニー アロイ マーク ルーイ

สลัด มันฝรั่ง อุ่น
salàt man faràŋ ʔùn
サラッ(ト)マン ファラン(グ) ウン

เรา กิน สาม ครั้ง ระหว่าง พัก
rao kin sǎam khráŋ rawàaŋ phák
ラオ キン サーム クラン(グ) ラワーン(グ) パッ(ク)

※タイ文字を学習されていない方向けに、当方でphonetic(発音記号)・カタカナを追記しています。

タイ(リペ島)をご旅行された際の思い出ということでお送りいただいた作文です。

では早速、添削後の文章と、タイ人添削者の方からのコメントなどをご紹介していきます。

タイ語作文「添削前」と「添削後」

添削をしてくださったタイ人の方からのコメントを最初にお伝えします。

タイ人添削者のコメント
  • 「添削前」の文章はよく書けていて、文法的な間違いはない
  • ただし、より自然な文章にしたい場合は、以下の言い方ができる
    →「添削後」の文章をご参照
  • 全体的に意味もよく伝わったが、「温かいポテサラ」とは何を意味(意図)しているのか?だけがやや分からなかった
  • (写真の)ポテサラが美味しそう
    ※余談

「基本的によく書けていて文法上の間違いはないのだけど、語句の順番等について、もう少し自然な言い回しにできるとなお良いよね」、ということで添削してくれた文章がこちらです。

タイ語作文【添削後】

ความทรงจำ
khwaam soŋcam
クワーム ソン(グ)ジャム

สลัด มันฝรั่ง อุ่น อร่อย มากเลย
salàt man faràŋ ʔùn ʔarɔ̀i mâak ləəi
サラッ(ト) マン ファラン(グ) ウン アロイ マーク ルーイ

ระหว่าง ที่ ไป พัก(ที่ ไทย) เรา กิน ไป 3 ครั้ง
rawàaŋ thîi pai phák(thîi thai)rao kin pai sǎam khráŋ
ラワーン(グ) ティー パイ パッ(ク)(ティー タイ)ラオ キン パイ サーム クラン(グ)

2021年6月14日追記:
文法的な説明に沿うような添削文のほうが学習者の皆様に分かりやすいという観点から、「添削後」の文章の青字部分を変更しました(青字は変更後のもの)。

解説の中で説明していきます。

添削後の文章、タイ人の方からのコメント等を踏まえ、私のほうで補足説明をしていきます。

Sripasa
Sripasa
詳細を説明していますので、ご自身のレベルによっては当然難しく感じられる方もいらっしゃると思います。

すべてを今の時点で理解する必要はありませんので、現時点では、理解できる範囲で理解していただければ十分です。

一定期間が経過して学習が進んだ後に再度見に来ていただけると、新しい発見などがあるかもしれません。

では、はじめます。



タイ語作文添削の補足説明

文章に2回入っている「パイ」の話

3行目の文章に注目してみます。

ระหว่าง ที่ ไป พัก(ที่ ไทย) เรา กิน ไป 3 ครั้ง

rawàaŋ thîi pai phák(thîi thai)rao kin pai sǎam khráŋ

ラワーン(グ)ティー パイ パッ(ク)(ティー タイ)ラオ キン パイ サーム クラン(グ)

この通り、「パイ(pai/ไป)」が2回出てきました。

「パイ(pai/ไป)」は「行く」という意味の動詞ですが、そこから派生して色々な意味で用いられます。

今回出てきたこの2つの「パイ(pai/ไป)」は別々の意味(異なる用法)で用いられています。

それぞれ見ていきます。

【前半の「パイ/ไป」】①「(タイに)滞在中」

前半の文章
添削前

ระหว่าง พัก
rawàaŋ phák
ラワーン(グ) パッ(ク)

添削後

ระหว่าง ที่ ไป พัก(ที่ ไทย)
rawàaŋ thîi pai phák(thîi thai)
ラワーン(グ)ティー パイ パッ(ク)(ティー タイ)

ここでは、「パイ(pai/ไป)」の後ろに「滞在する」という動詞「パッ(ク)(phák/พัก)」が来ています。

この、

「パイ(pai/ไป)」+「パッ(ク)(phák/พัก)」

というような、動詞が二つ並び、前の動詞に「パイ(pai/ไป)」(または「マー(maa/มา)」)が来て、その後ろにも動詞が来る場合、後ろの動詞が前の動詞(パイ/ไป or マー/มา)の目的を表します(出所:『タイ語の基礎』p125)

【例】
ไปเรียน(パイ・リアン)
:勉強しに行く
(行く目的=勉強する(こと))

มารับ(マー・ラッ(プ))
:迎えに来る
(来る目的=迎える)

添削文で出てきた文章は、「パイ・パッ(ク)(pai phák/ไป พัก)」でした。

これを先ほどの例に当てはめると、以下のように整理できます。

「パイ(pai/ไป)」+「パッ(ク)(phák/พัก)」

滞在しに行く
行く目的=滞在する

添削前の文章との違いと、「パイ」と「マー」

添削前の文章には「パイ(pai/ไป)」が入っていなかったわけですが、入っていなくても意味は通じるけど自然な文章ではないとのこと。

また、「パイ(pai/ไป)」の代わりに「マー(maa/มา)」が入っていても違和感を覚えないと、当初コメントをいただいていました。

ですが、厳密に文法的な視点に照らして考えた場合、「パイ=行く」を使うことで、「パイ・パック滞在しに行く」となり、話し手はタイ以外の国にいて、そこからタイへの「物理的な移動」により「滞在しに行った」と捉えることができますので、今回のケースに照らすと「パイ(pai/ไป)」のほうが適切だと整理し直しました。
(そのため当初は「マー(maa/มา)」を書いていましたが、こちらは2021年6月14日に「パイ(pai/ไป)」へ変更済みです)

「パイ(pai/ไป)」の代わりに「マー(maa/มา)」が入ってもタイ人添削者の方が当初違和感を覚えなかったのは、タイ語作文の文章だけでは話し手や滞在先の位置関係が明確ではなかったため、「マー(maa/มา)」でも自然に感じるとコメントしてくれたのではないか、と著者個人は考えています。

ラワーン(グ)の使い方

「ラワーン(グ)(rawàaŋ/ระหว่าง)の後ろに「ティー(thîi/ที่)」が入りました。

この、「ラワーン(グ)・ティー」で「〜するあいだ」という意味になります。
(「ラワーン(グ)」の前に「ナイ(nai/ใน)」がつくこともあります)

〜するあいだ

(ใน)ระหว่างที่ 〜
(ナイ)ラワーン(グ)・ティー 〜
(nai)rawàaŋ thîi 〜

出所:『タイ語の基礎』p235

構文

ระหว่างที่ラワーン(グ)・ティー+(主語)+動詞+目的語
:(主語が)〜するあいだ、……

(ใน)ระหว่างที่(ナイ)ラワーン(グ)・ティー+(主語)+動詞+目的語
:(主語が)〜するあいだ、……

ちなみに「ラワーン(グ)」に続く「ティー」は、口語では省かれることもある(省略されてもOK)とのことでした。
(そのため当初は「ティー(thîi/ที่)」を省いていました→2021年6月14日に青字部分を追加しています)

タイに滞在中(=タイに滞在しに行った間)

ระหว่าง ที่ ไป พัก ที่ ไทย
ラワーン(グ)・ティー パイ パッ(ク)ティー タイ
rawàaŋ thîi pai phák thîi thai

ระหว่าง ไป พัก ที่ ไทย
ラワーン(グ) パイ パッ(ク)ティー タイ
rawàaŋ pai phák thîi thai

【後半の「パイ/ไป」】②「3回も食べた」

続いて、後半部分の「パイ(pai/ไป)」を見ていきます。

こちらは、先ほど見た前半部分の「パイ(pai/ไป)」とは用法が異なります。
(別のものとお考えください。)

後半の文章
添削前

เรา กิน สาม ครั้ง
rao kin sǎam khráŋ
ラオ キン サーム クラン(グ)

添削後

เรา กิน ไป สาม ครั้ง
rao kin pai sǎam khráŋ
ラオ キン パイ サーム クラン(グ)

添削前の文章と比べると、添削後の文章には、動詞「キン/กิน」の後ろに「パイ(pai/ไป)」が入りました。

語順に注目すると、「パイ(pai/ไป)」の位置は、前の動詞(この場合は「キン/กิน」)の後ろにあります。

前の動詞の後ろに「パイ(pai/ไป)」が入ることで、「それはもう過去のこと、過去に行われたことである」というニュアンスが出ます。


(『タイ語の基礎』p131に、「パイ/ไป」の用法の一つとして、前の動詞の後ろに「パイ/ไป」が来て「話し手の領域からの離反…動作や状態が完全に成立することを表す」とあります。今回のケースにぴったりと合う説明は見つけられなかったのですが、あえて言うなら「動作や状態が完全に成立する」というニュアンスが今回のケースに一番近いのではないか、と考えます。)

この点に関連して、近い意味を持つ文章で比較したほうが分かりやすいと思い、以下の4つの文章の違いを教えてもらいました。

添削後の文章は①、添削前の文章は②です。③と④は私(当サイト運営者)が追加した文章です。

  1. เรากินไป 3 ครั้ง
    rao kin pai sǎam khráŋ
    ラオ キン パイ サーム クラン(グ)
    →「(家で食べた、お店で食べたなど場所を問わず)食べた回数」を言いたいとき
    「食べた回数」に焦点

  2. เรากิน 3 ครั้ง
    rao kin sǎam khráŋ
    ラオ キン サーム クラン(グ)
    →「3回食べた」(①と似た意味)

  3. เราไปกิน 3 ครั้ง
    rao pai kin sǎam khráŋ
    ラオ パイ キン サーム クラン(グ)
    →「お店に食べに行った回数」を言いたいとき
    「行って食べた」ことに焦点

  4. เราได้กิน 3 ครั้ง
    rao dâi kin sǎam khráŋ
    ラオ ダイ キン サーム クラン(グ)
    →「この料理を3回食べたことがある」という経験を言いたいとき
    「経験」に焦点

この4つの文章の意味はそこまで変わらないものの、シチュエーションに応じてどの文章が適しているのか(自然なのか)が変わる、とのこと。

ご参考までに、この件についてのタイ人添削者のコメント(一部)を、タイ語ですがそのまま載せておきます。

เรากินไป 3 ครั้ง
– บอกจำนวนว่ากินกี่ครั้ง อาจกินที่บ้าน หรือที่ร้าน

เรากิน 3 ครั้ง
-ความหมายคล้ายกับอันแรก

เราไปกิน 3 ครั้ง
– บอกจำนวนครั้งที่ไปกินที่ร้าน

เราได้กิน 3 ครั้ง
– บอกประสบการณ์ว่าเคยกินเมนูนี้ 3 ครั้ง

ความหมายไม่ต่างกันมาก แต่ความเป็นธรรมชาติของประโยค เหมาะกับสถานการณ์ที่ต่างกันค่ะ

ここまでを整理すると、今回添削してくれた文章「ラオ キン パイ サーム クラン(グ)/เรากินไป 3 ครั้ง」は、

(3回食べたことは)過去に行われたこと



食べた回数を強調(3回 “” につながる)



3回も食べた

と整理できるのでは、と考えます。

「温かいポテサラ」とは?

タイのポテサラ
タイの “ポテサラ”
(画像は添削依頼者がご自身で撮影されたもの)

これはタイ語の話ではないかもしれませんが、「サラッ(ト) マン ファラン(グ) ウン/温かいポテサラ」が何を意味しているのか、文章を読んだだけではよく分からなかったそうで、

「サラッ(ト) マン ファラン(グ) ウン」は「じゃがいもに火が通っている」ということを言いたいのか?

とタイ人添削者の方から質問がありました。

私のほうから、日本ではポテサラは通常冷たくして食べるものなので、温かいポテサラが出てきてびっくりした(印象的だった)ニュアンスが恐らくは含まれているのではないか、と伝えて理解してもらいました。

この点は、タイ語自体に問題はないものの、”ポテサラは通常冷たい” という共通認識がなかったため書き手の意図が伝わりにくかったケースかと思います。

このポテサラのケースはそこまで気にしなくていいかな?と思いますが、外国の方とのコミュニケーションの場合は、このように意図が伝わりにくいこともあったりします。

そのため、作文される際も、「相手(この場合はタイ人)に理解してもらう」ことまでを考えて(必要に応じて説明を加えるなどしながら)文章を書かれるとさらに良い文章になるのかな、と思います。



さいごに|タイ語作文の添削

トライアル的な試みで行ったタイ語作文添削ですが、やはりネイティブの方に見てもらうのって非常に価値がありますよね。

私自身も大変勉強になりました。

本記事は以上になります。

ここまでお読みくださり有難うございます。

【第2回】タイ語作文添削はこちら

【第2回】タイ語作文添削「タイの犬」

「タイ語作文」関連のおすすめテキスト①

間違いだらけのタイ語』は、日本人がよく間違える言い回しや表現について、何が間違っていてどう直せば正しくなるのかということを、具体的に文章を挙げて説明してくれています。

カタカナ表記はありませんが、タイ語の発音記号(phonetic)が理解できる方であれば、タイ文字の読み書きを学習されていない方でも読むことが可能です。

本書で挙げられている例文も「AはBです」といった基本的なものから始まっており、本全体で見ると中級学習者の方向けかな、と個人的には感じるものの、初級学習者の方でも学びのある(手元に置いておいて損はない)一冊かと思います。

また、上級学習者の方でも、自分が誤解して覚えてしまっている文法事項や、(本来は正しくないのに)癖になってしまっている言い方を見直すのに良い一冊だと思います。

「タイ語作文」関連のおすすめテキスト②

タイ語上級講座 読解と作文』は、タイトルに「上級」とありますが個人的には中級レベルの方〜おすすめの一冊です。

例文やフレーズが豊富に掲載されていますので、それを一つずつ見て自分の文章に置き換えていくだけでも、力がついていくと思います。

カタカナ表記や発音記号(phonetic)は無いため、タイ文字の読み書きできる方が対象ですが、作文(タイ語の文章)力をつけたい方にはこちらもおすすめです。

本書は『【タイ語本】独学でタイ語を勉強する方におすすめの学習教材【テキスト・音声】(初級~中級)』の中でもご紹介していますので、どうぞあわせてご覧ください。

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