タイ映画

【タイ映画】『YAMADA-The Samurai of Ayothaya-』と山田長政の人物像考察[アユタヤ時代]

山田長政を描いたタイ映画『YAMADA -The Samurai of Ayothaya-』
※記事内に商品プロモーションを含む場合があります

日本人の中で、タイに深く関わった歴史上の人物として真っ先に挙げられるのは、やはり山田長政(やまだ ながまさ)ではないでしょうか。

私が知っている山田長政像は、主に白石一郎著『風雲児』によるものだったのですが、これを最初に読んだ時の驚きは今でもよく覚えています。

Sripasa
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こんな時代に、こんなに深くタイ社会に食い込んでいた日本人がいたなんて…!




今回の記事では、この山田長政を主人公としたタイ映画『YAMADA-The Samurai of Ayothaya-』について、そして、小説『風雲児』で描かれている山田長政の人物像に関する私なりの考察について見ていきます。

では、はじめます。

山田長政を描いたタイ映画『YAMADA -The Samurai of Ayothaya-』の概要

『โปสเตอร์และตัวอย่างใหม่ “ซามูไร อโยธยา”』

山田長政を描いたタイ映画『YAMADA -The Samurai of Ayothaya-』山田長政を描いたタイ映画『YAMADA -The Samurai of Ayothaya-』 ©MThai.com

出所:MThai.com(https://movie.mthai.com/movie-news/80617.html)

『YAMADA ซามูไร อโยธยา(サムライ・アヨータヤー)』(英語版は『YAMADA The Samurai of Ayothaya』)は、2010年にタイで公開された映画です。

当時は、観に行こうか悩む間もないくらい、あっという間に公開が終了して(打ち切られて)しまい、結局観ることができませんでした。

あらすじ

※一部ネタバレになりますので、ご覧になりたくない方はスキップしてください。

時は、ナレースワン大王治世下。

日本人傭兵である山田長政は、ビルマ兵を装っていた輩(実は日本人だったことが後に分かる)に襲われるが、間一髪のところをタイ人に救ってもらう。

そして、タイ人の看病を受け、タイ人の僧侶からムエタイを習い、タイ人と友情を育んでいく。

友情の証として刀を交換し、共にビルマの辺族と戦い、最後に悪い日本人を倒すという物語。


こちらもどうぞ

【映画公開前のニュース(日本語)】
「山田長政を描いた日本人主演映画「YAMADA」、タイで全国一斉公開」
http://bangkok.keizai.biz/headline/562/
(バンコク経済新聞 2010年12月7日)



山田長政のタイ映画『YAMADA The Samurai of Ayothaya』の感想

①史実との違い

歴史を知るという点では、山田長政が仕えていたのはソンタム王であり、ナレースワン大王ではない点のように、史実と異なる点も見受けられました。

ただ、そういった点は抜きにして、単純に映画を楽しむという観点だと、思っていたよりも面白かったです。

Sripasa
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ナレースワン大王は在位1590年~1605年(アユタヤ王朝第21代目の王)。

ソンタム王は在位1611年~1628年(アユタヤ王朝第24代目の王)。

山田長政がタイに渡ったのが1612年と言われています。

②面白さ

K-1選手で国民的スターのブアカーオ(bua khǎao / บัวขาว)が出ていて、アクションシーンが見ごたえがありました。

また、日本語が使われている場面があったり(冒頭も、山田長政の語り(音声は日本語で、タイ語または英語字幕つき)で始まります)、タイ語も聞き取りやすいので、タイ語を勉強している日本人にとっては、とても良いリスニングの教材になると思います。

③個人的にお気に入りの描写

山田長政(日本人)とタイ人との友情がメインで描かれており、日本人の視点で描かれた小説『風雲児』には全く無い視点が、とても興味深く感じました。

この映画で描かれている山田長政像、私は個人的にかなり好きです(笑)。

謙虚に異文化(この場合はムエタイ)を学ぶ姿勢は、とても好感が持てました。

実際の山田長政も、爵位をもらえるくらいタイ社会と関わっていたのだから、タイ人とちゃんとコミュニケーションを取り謙虚に異文化を学んでいたはずなので、意外にこの点は史実に忠実なのかもしれません(ただの私見ですが、「そうであってほしい」という希望も含まれています)。



小説『風雲児』で描かれている山田長政の人物像についての考察

先日山田長政について学ぶ機会があり、実は小説などで描かれているほど高い位までは昇りつめていなかったなど、興味深い点を知ることができました。

「オークヤー・セーナーピムック(ออกยาเสนาภิมุก)」とは、あくまでも官位であって職名ではない。たとえば山田公爵といったものである。

(途中省略)

官職の上では、グロム・アーサー・ジープン(日本人義勇組)という、一介の外国人部局の長であるにすぎないのであって、長政伝説にあるような総理大臣でもなければ軍事大臣でもなく、いわんや国王などでありえようはずがない。

出所:石井米雄、吉川利治著『日・タイ交流600年史』pp63-64

一方、上でご紹介した小説『風雲児』では、山田長政が与えられた称号「オークヤー・セナーピムック」は武官の最高位、アユタヤ王朝の軍神とされる名誉職とされ、総理大臣(ガラーホーム)と肩を並べるくらい権力を持った高官であるようなことが描かれています。

小説としてはとても面白くお勧めですが、史実と照らすと異なる部分もあるようです。

なお、山田長政を題材にした小説は、他に遠藤周作著『王国への道』もあります。

こちらも面白くおすすめです。

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さいごに

この映画ですが、Youtube上で観ることが可能です(2018年7月時点)。
※公式のものかどうかが分かりませんでしたので、リンクは貼りませんが、英語のタイトル(YAMADA-The Samurai of Ayothaya-)で検索するとヒットします。

90分と短い映画ですし、もしまだご覧になっていない方がいらっしゃったら、是非観てみてください。

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