手軽に読める本といえば、小説やエッセイなどの文庫本ですよね。
本記事では、タイについての小説・エッセイの中で、私のおすすめ5選をご紹介します。
どれも本当に面白く、タイ在住の方やタイ好きの方にぜひ読んでいただきたい本です。
文庫本なので手に取りやすいのも魅力です。
では、はじめます。
タイが舞台のおすすめの小説(歴史小説)・エッセイ5作品
おすすめ本①|松本清張著『熱い絹』【ジムトンプソンが題材】
1冊目は、松本清張著『熱い絹』です。
タイシルクの超有名店「Jim Thompson(ジムトンプソン)」の創業者である、アメリカ人のジム・トンプソン氏が、1967年にマレーシアのキャメロン・ハイランドで消息を絶ったという話は有名ですが、その史実に基づく松本清張氏の推理小説です。
タイに行くと必ず見かける、お土産探しにも欠かせない、ジムトンプソン。
その創業者のジム・トンプソン氏にこんな歴史があったなんて…と、読んだ当初はびっくりしました。
なお、ジム・トンプソン氏の消息は、今現在も分かっていないので、小説の中ではあくまで松本清張氏の小説の中で事件が推理されます(この点は史実ではない)。
その辺りも頭に入れながら読み進めると、とても面白いです。
この小説を読んで以降、タイに住んでいる間にマレーシアのキャメロン・ハイランドに一度行ってみたいと思っていましたが、それは叶いませんでした。
いつか、機会があれば…と思っています。
上・下巻ありますが、物語に引き込まれてあっという間に読み終えてしまうと思います。
Kindle版も出ていて手に取りやすいと思いますので、ぜひ読んでみてくださいね。
ラオスが舞台の松本清張の小説『象の白い脚』もおすすめ
松本清張氏は、ラオスに関する話も書かれています。
『象の白い脚』です。
以前は松本清張全集でしか読むことができなかったのですが、現在は文庫本が出ております。
(Kindleもあります)
こちらは、ビエンチャンが舞台です。
ストーリー自体の面白さというよりは、当時(1969年)のラオス・ビエンチャンの様子を物語から垣間見ることができるだけで、価値のある一冊だと思います。
ラオスとタイ東北部(イサーン)の歴史について、『タイ東北部「イサーン」とラオスの歴史を紐解いてみる』の中でご紹介していますので、宜しければご覧ください。
おすすめ本②|白石一郎著『風雲児』【アユタヤが舞台の歴史小説】
続いては、白石一郎著『風雲児』(文春文庫)です。
タイに関わった日本人の中で、有名になった人物としては(恐らく)最初の人物であろう、山田長政の物語です。
「アユタヤの日本人町跡」と聞いて最初に思いつくのがこの山田長政、という方も多いのではないでしょうか。
山田長政を題材にした『王国への道』も良かったです
本記事を書いた後、Twitterでおすすめいただいたのが、同じく山田長政を題材にした遠藤周作氏の『王国への道』です。
電子書籍版が出ていたのでKindleで購入して読んでみたのですが、『風雲児』とはまた切り口が異なり、非常に楽しく読めました。
対照的な思想の山田長政とペドロ岐部(岐部茂勝)を対比する描写も良かったですし、『風雲児』よりも分量がコンパクトなおかげか、分かりやすいストーリーのおかげか、ストレスなく(3時間半ほどで)読めたのも今の気分に合っていて良かったです。
山田長政に興味のある方はぜひ両書とも読んで比べてみてほしいと思います。『王国への道』と比べ『風雲児』のほうが上下巻に分かれているだけあり、描写が細かいのですが、それはそれでとても面白いです。
両書ともそれぞれの良さがあるように感じました。
この本を読むと、ペドロ岐部の生涯について描かれた遠藤周作氏の『銃と十字架』も読んでみたくなりました。
イギリス人三浦按針が主人公の小説『航海者』もおすすめ
白石一郎氏の作品では、徳川家康に仕えたイギリス人三浦按針(ウイリアム・アダムス)の生涯を描いた『航海者』も、タイとは関係ないのですが、『風雲児』とほぼ同じ1600年代を舞台にした作品で、個人的におすすめの一冊です。
【タイ映画】『YAMADA-The Samurai of Ayothaya-』と山田長政の人物像考察[アユタヤ時代]
おすすめ本③|近藤紘一著『バンコクの妻と娘』
新聞社の特派員だった近藤紘一氏。
同氏の著書といえば、ベトナム人の奥様とのやり取りが痛快な『サイゴンから来た妻と娘』、ベトナム戦争でのサイゴン陥落前後の混乱を、著者がサイゴン(ホーチミン)で目の当たりにする様子を描いた『サイゴンのいちばん長い日』が有名ですが、近藤氏はバンコク駐在も経験されているんですよね(1978年〜1983年)。
その時の様子を描いた『バンコクの妻と娘』を、おすすめの1冊として挙げたいと思います。
1970年代のタイ・バンコク駐在経験者(かつベトナム・サイゴン駐在経験者)が当時のバンコクの様子を語ってくれるだけでも、貴重な一冊です。
先にご紹介した2冊とあわせ、ぜひ読んでみてください。
なお、『バンコクの妻と娘』はKindle版は出ていないため(2020年5月20日時点)、Kindle版でお探しの方は以下の書籍もご検討ください。
おすすめ本④|高野秀行著『極楽タイ暮らし』
この『極楽タイ暮らし』は、タイに住み始めた頃に、バンコクの紀伊国屋書店で購入したものです。
当時は著者の高野秀行さんという方を存じ上げず、タイトルに惹かれて購入した1冊なのですが、同氏のチェンマイ大学での日本語教師生活が描かれていて、面白くサクッと読めたんですね。
それで、著者の方に興味が湧き、他に出版されている書籍を色々と手に取るようになりまして。
そこで、著者が学生の頃、早稲田大学探検部に所属していて、世界の辺境を訪れて体を張ってルポを書いていることを知り、著者の本をどんどん読み進めていくうちに、すっかりファンになりました。
高野秀行氏の作品では、タイとは直接関係ありませんが、船戸与一氏と軍事政権下のミャンマーを旅した『ミャンマーの柳生一族』、ミャンマー北部(ゴールデン・トライアングル)に潜入して反政府ゲリラと共にアヘン栽培に従事した『アヘン王国潜入記』や、サハラ砂漠でフルマラソンに(なぜか)出場した体験を描いた『世にも奇妙なマラソン大会』など、体を張ったノンフィクション・ルポが唯一無二なんですよね。
それでいて、高野さんらしい「気の抜けた」感じのおかげで、読者が居心地よく読み進められるような、そんな作品が魅力です。
最初にご紹介した『極楽タイ暮らし』だけではなく、他の作品も読んでいただいた方が、高野さんの魅力を感じていただけると思います。
おすすめ本⑤|トムヤンティ著『メナムの残照』【タイの小説】
太平洋戦争時の日本人軍人「小堀(コボリ)」とタイ人女性「アンスマリン」の恋愛を題材にした物語『メナムの残照』(角川文庫)です。
タイの小説の邦訳版で、タイ人の中で知らない人はいないという位、タイで有名な小説です。
タイ語のタイトルは「クーカム(คู่กรรม/khûu kam)」。
タイ人と話をする際に何かと話題に出てくるので、話を知っておいて損はないと思います。
こちらの本は日本では既に絶版で中古本のみ入手が可能なのですが、2015年頃にタイの紀伊国屋で文庫本の復刻版を見つけ、購入しました。
タイ紀伊国屋の公式サイト上で在庫がある旨出ておりますので(該当ページはこちら)、現時点ではタイで購入可能なようです(2020年5月20日時点の情報)。
タイ紀伊国屋オンライン
(Books Kinokuniya Thailand):
https://thailand.kinokuniya.com/
さいごに|タイを舞台にしたおすすめの小説・エッセイ5選
本記事では、タイ好きの方、タイに興味のある方、タイにお住まいの方にぜひ読んでいただきたい、タイを舞台(題材)にした小説・エッセイをご紹介しました。
どれも本当におすすめの本です。
家で過ごす時間が増えている今だからこそ、「読書」で日々の楽しみが少しでも増えたらいいな、と思います。
Kindle(電子書籍)版も増えているようですので、書店で直接の購入が難しい場合は電子版で読んでみることも検討されてはいかがでしょうか。
本記事は以上になります。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
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