タイは果物が豊富で、季節によって色々な果物を楽しめますが、タイの食を語る上で欠かせない果物の一つにパパイヤ(パパイア、Papaya)があります。
熟したパパイヤを果物として食べるのはもちろん、パパイヤのサラダ「ソムタム(ส้มตำ / sômtam)」を作る際にも、材料となるパパイヤは欠かせないものです。
そんなタイとも繋がりの深いパパイヤ。
本記事ではパパイヤのタイ語での名称(มะละกอ/マラゴー(マラコー))の語源と、タイにおけるパパイヤの歴史、の2点を見ていきます。
- パパイヤのタイ語の名称「マラゴー(マラコー)」の語源
- タイでのパパイヤの歴史
では、はじめます。
パパイヤを意味するタイ語「マラゴー」の語源
タイ語でパパイヤは「マラゴー(マラコー)」と言います。
- パパイヤ
:มะละกอ(malakɔɔ)
(マラゴー・マラコー)
มะละกอ(マラゴー)という名称になった理由は、タイでのパパイヤの歴史と関係があります(詳細は後述)。
語源について先に結論をお話しすると、パパイヤのタイ語名「มะละกอ/マラゴー」は、都市名マラッカ(タイ語で「มะละกา/マラガー」)から来ており、マラッカ(マラガー)からやって来た植物という意味でマラゴーと名付けられたと言われています。
マラゴー / มะละกอ / malakɔɔ
【パパイヤ】
↑
マラガー / มะละกา / malakaa
【マラッカ】
続いて、タイでのパパイヤの歴史を見ていきます。
タイにおけるパパイヤの歴史
パパイヤは、元々タイにあった果物ではありません。
中南米原産の果物で、16世紀にスペイン人によってフィリピンへ伝わり、そこから東南アジアに広がったと言われています。
その後、マラッカ(現在はマレーシアの都市)を経て、ポルトガル人(またはスペイン人)によってタイへと伝わりました(諸説あり)。
タイのアユタヤ時代に西洋人が記した書簡の中で、その当時アユタヤで栽培されていた樹木・果物が描かれていたのですが(詳細は以下)、その中にパパイヤはありませんでした。
(カッコ内はタイ語名)
- バナナ(กล้วย / klûay)
- ジャックフルーツ(ขนุน / khanǔn)
- ドリアン(ทุเรียน / thúrian)
- パイナップル(สับปะรด / sàppàrót)
- マンゴー(มะม่วง / mamûaŋ)
そのためか、タイへ伝来したのはそれ以降のトンブリー王朝(1767〜1782年)またはラタナゴーシン朝(チャクリー王朝、1782年〜)初頭の18世紀と言われています。
ただし、この件も諸説あり、アユタヤ時代(*)の17世紀には、「マラゴー(มะละกอ)」ではなく「melon(แตงไทย)」という名称で、パパイヤが既にタイへ伝来していたという説もあります。
(*)遅くともナーラーイ王治世下(在位1656〜1688年)、一説にはそれより前のソンタム王治世下(在位1611〜1628年)とも。
【補足】タイ国内の各地域でのパパイヤの名称
パパイヤのタイ語名称は「マラゴー/มะละกอ」とご紹介しましたが、タイ国内のそれぞれの地域には、独自の呼び方もあるのでご紹介します。
- タイでの「パパイヤ」の一般的名称
:มะละกอ(malakɔɔ)
(マラゴー・マラコー) - タイ東北部での「パパイヤ」の名称
:บักหุ่ง
(バックフン)(*1) - タイ南部での「パパイヤ」の名称
:ลอกอ
(ローゴー) - タイ北部での「パパイヤ」の名称
:บะก้วยเต๊ศ
(バグゥアイテッ)(*2) - 【参考】ラオス(ラオ)語での「パパイヤ」の名称
:ໝາກຫຸ່ງ
(màak huŋ / マークフン)
(*1)บักはหมาก(「果実」を意味)の変形、หุ่งはรุ่งเรืองが元になっているとのこと(その昔、パパイヤは外来種ということで位の高い人が食べる果物だった。次第に栽培する人が増え、それを献上すると褒美がもらえたことから、รุ่งเรือง(ฮุ่งเฮือง、繁栄せる)と言われるようになったとか)。
(*2)パパイヤの昔のイサーンでの呼び名「กล้วยกรุงเทพ(省略形はกล้วยเทพ、タイ東北部(イサーン)で栽培が一般的になる前は、パパイヤはバンコクからやってくる果物だったことに由来)」がタイ北部に残っているのだとか。
【参考】果物を表す「หมาก(マーク)」と「มะ(マ)」の関係
ラオス語でໝາກ(màak)は果実を意味します。
タイ語でもหมาก(màak)は元々「果実」を指す語でしたが、หมาก(màak)がมะ(ma)になり、มะ(ma)が果物の名称の頭につくようになりました。
そのため、タイ語の果物の名称は「มะ/ma」で始まるものが少なくありません。
参考までに、ラオス語とタイ語の果物の名称を一部挙げてみます。
果物名 | タイ語 | ラオス語 |
---|---|---|
マンゴー | มะม่วง (mamûaŋ) | ໝາກມ່ວງ (màak muaŋ) |
レモン | มะนาว (manaaw) | ໝາກນາວ (màak náaw) |
ココナッツ | มะพร้าว (maphráaw) | ຫມາກພ້າວ (màak phâaw) |
まとめ:パパイヤのタイ語名「マラゴー」の由来と、タイでのパパイヤの歴史
本記事では、タイには欠かせない果物であり食材でもある「パパイヤ」について、タイ語での名称の由来と、タイにおけるパパイヤの歴史を見てきました。
まとめます。
- パパイヤのタイ語名称「มะละกอ/マラゴー」の語源は、都市名マラッカ「มะละกา/マラガー」
- パパイヤは元々タイにあった果物ではなく、17〜18世紀にポルトガル人(またはスペイン人)の手によって、マラッカからタイへと伝わった(諸説あり)。
- そのため、マラッカ(マラガー)からやって来た植物という意味で、タイ語での名称はマラゴーとなった。
以上です。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
https://www.matichon.co.th/lifestyle/news_461513(タイ語)
https://www.ageconstory.com/2019/07/15/history-of-papaya/(タイ語)
https://th.wiktionary.org/wiki/มะละกอ(タイ語)