『独学で勉強しよう!超初心者向けタイ語講座』の第19回です。
名詞については、第6回講義『名詞の修飾について』の中で、主にその修飾方法について見てきました。
ポイントは「後ろから修飾する」、ということでした。
第19回目の本講義でも、名詞の修飾方法についてお話ししていきます。
具体的には、タイ語の名詞を修飾する際に用いられる類別詞の概要、タイ語の指示語の概要と、類別詞と指示語を組み合わせた使い方の3点を主に見ていきます。
本講義では「タイ語の類別詞とは?」というベーシックなところをまずは知っていただきたいと思います。
- タイ語の類別詞の概要(日本語の助数詞との違い)
- タイ語の指示語について
- 類別詞と指示語の組み合わせ方
※本講義ではタイドラマのセリフはご紹介しません。あらかじめご了承ください。
では、はじめます。
タイ語の類別詞について
「タイ語の類別詞」と「日本語の助数詞」の違い
日本語の助数詞は、ある名詞を数える(数量を述べる)際に、数字の後ろにつける語です。
後ほどタイ語の言い方と比べるために例を挙げてみます。
- 本 7 冊
- 日本人 3 人
- 紙 5 枚
- 携帯(電話) 2 台
- マンゴー 9個
この数字の後ろに来る「冊、人、枚、台、個」といった語を「助数詞」と言いますが、タイ語の類別詞もこの助数詞と同じ役割を持っています。
すなわち、数字の後ろに名詞に応じた単語が来ます。
このタイ語の類別詞の「助数詞的な役割」については、日本語とタイ語で語順が同じ「名詞+数字+類別詞(助数詞)」であることもポイントです。
名詞+数字+類別詞
タイ語の類別詞の例(数字を表す言い方)
それでは、「本7冊」を例に挙げ、日本語とタイ語の言い方を比べてみます。
【例1】本7冊
本 7 冊
ナンスー 7 レム
หนังสือ 7 เล่ม
nǎŋsɨ̌ɨ 7 lêm
名詞+数字+類別詞
タイ語単語 | 意味 |
---|---|
ナンスー nǎŋsɨ̌ɨ หนังสือ | 【名詞】 本 |
レム lêm เล่ม | 【類別詞】 〜冊(本など) |
他の例も挙げてみます。
【例2】日本人3人
日本人 3 人
コン・イープン 3 コン
คนญี่ปุ่น 3 คน
khon yîipùn 3 khon
タイ語単語 | 意味 |
---|---|
コン・イープン khon yîipùn คนญี่ปุ่น | 日本人 ※第6回講義にも出てきました |
コン khon คน | 【類別詞】 〜人 ※名詞「人」という意味もあり |
【例3】紙5枚
紙 5 枚
クラダート 5 ペン
กระดาษ 5 แผ่น
kradàat 5 phæ̀n
タイ語単語 | 意味 |
---|---|
クラダート kradàat กระดาษ | 【名詞】 紙 |
ペン phæ̀n แผ่น | 【類別詞】 〜枚 (紙や板などの平べったい形状のもの) |
【例4】携帯(電話)2台
携帯(電話) 2 台
ムートゥー 2 クルアン(グ)
มือถือ 2 เครื่อง
mɨɨthɨ̌ɨ 2 khrɨ̂aŋ
タイ語単語 | 意味 |
---|---|
ムートゥー mɨɨthɨ̌ɨ มือถือ | 【名詞】 携帯(電話) |
クルアン(グ) khrɨ̂aŋ เครื่อง | 【類別詞】 〜台 (機械類) |
【例5】マンゴー9個
マンゴー 9個
マムアン(グ) 9 ルーク
มะม่วง 9 ลูก
mamûaŋ 9 lûuk
タイ語単語 | 意味 |
---|---|
マムアン(グ) mamûaŋ มะม่วง | 【名詞】 マンゴー |
ルーク lûuk ลูก | 【類別詞】 〜個 (丸い果物やボールなど) |
タイ語の類別詞は、日本語の助数詞と同じ役割に加えて、ある特定の名詞を言及する際にも用いるのが特徴です。
タイ語の類別詞は、名詞の数にかかわらず名詞を限定する役割も持っており、日本語の助数詞よりも幅広い使われ方をする、と整理できます。
タイ語 類別詞 | 意味 |
---|---|
レム lêm เล่ม | 〜冊 (本など) |
コン khon คน | 〜人 |
ペン phæ̀n แผ่น | 〜枚 (紙や板などの平べったい形状のもの) |
クルアン(グ) khrɨ̂aŋ เครื่อง | 〜台 (機械類) |
ルーク lûuk ลูก | 〜個 (丸い果物やボールなど) |
今回挙げた類別詞はごく一部で、すぐには覚えられないほどたくさんの種類があります。
『初級 タイ語のすべて』によると、よく使われる類別詞は70語ほどある(*)とのこと。
そのため、一度にすべてを覚える必要はなく、初級〜中級の方向けの辞書やタイ語のテキストには、類別詞の一覧表が付いていることがほとんどですので、よく使うものから少しずつ覚えていくので大丈夫です。
実際に私のほうでも、タイ語辞書に掲載されている「主な類別詞一覧」に挙げられている類別詞の数を数えてみました。
パスポート初級タイ語辞典』79語
(【付録18】主な類別詞(pp.459〜460)に掲載の類別詞数)
『タイ日・日タイ 簡約タイ語辞典』79語
(附録2 主要類別詞一覧(pp.452-454)に掲載の類別詞数)
と、(中身が若干異なるため)たまたまですが、同じ79語でした。
【ご参考】数字(数詞)について(タイ語の「1から10」までの言い方)
今回、タイの数字が出てきました。
ここでは1〜10までの言い方をご紹介します。
アラビア数字 [タイ文字] | 数字の読み方 [タイ語(文字)表記] |
---|---|
1 [๑] | ヌン nɨ̀ŋ [หนึ่ง] |
2 [๒] | ソーン sɔ̌ɔŋ [สอง] |
3 [๓] | サーム sǎam [สาม] |
4 [๔] | シー sìi [สี่] |
5 [๕] | ハー hâa [ห้า] |
6 [๖] | ホック hòk [หก] |
7 [๗] | チェット cèt [เจ็ด] |
8 [๘] | ペート pæ̀æt [แปด] |
9 [๙] | ガーオ kâao [เก้า] |
10 [๑๐] | シップ sìp [สิบ] |
タイ語の指示語について
一旦類別詞の話から離れます(後ほど戻ってきます)。
ここからは「指示語」の話をしていきます。
「指示語」とは、日本語の「これ、それ、あれ」や「この〜、その〜、あの〜」に相当する語です。
日本語と同様に、タイ語にも指示語があります。
日本語 | タイ語 |
---|---|
これ | นี่ nîi ニー |
それ | นั่น nân ナン |
あれ | โน่น nôon ノーン |
「これ」は、第10回講義『「そうです/そうではありません」の言い方』の中で「これは私の携帯ではない」という例文の中でも出てきました。
日本語 | タイ語 |
---|---|
この○○ | ○○นี้ ○○níi ニー |
その○○ | ○○นั้น ○○nán ナン |
あの○○ | ○○โน้น ○○nóon ノーン |
「この〜、その〜、あの〜」と言う場合、日本語とタイ語では修飾の位置関係が異なるのがポイントになります。
日本語の場合、名詞は指示語の後ろに来ますが、タイ語の名詞は(第6回講義で学習したとおり)原則として「後ろから修飾」しますので、名詞は指示語の前に来ます。
また、タイ語の「これ」と「この」、「それ」と「その」、「あれ」と「あの」は、子音や母音は同じですが声調が変わります。
日本語 | タイ語 |
---|---|
นี่ nîi ニー | ○○นี้ ○○níi ニー |
日本語 | タイ語 |
---|---|
นั่น nân ナン | ○○นั้น ○○nán ナン |
日本語 | タイ語 |
---|---|
โน่น nôon ノーン | ○○โน้น ○○nóon ノーン |
タイ語の類別詞と指示語の組み合わせ
タイ語の類別詞と指示語
ここからは、タイ語の類別詞と指示語を組み合わせた表現を見ていきます。
この話は日本語には存在しない概念なので少し難しく感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。
ポイントを先にお伝えすると、日本語の「この(その、あの)◯◯」という表現をタイ語で言う際も、類別詞が必要になってくるということです。
具体的に見ていきましょう。
【例1】この本
「この本」と、ある特定の本を指して言いたい場合、タイ語では以下のように言います。
この本
หนังสือ เล่ม นี้
nǎŋsɨ̌ɨ lêm níi
ナンスー レム ニー
名詞+類別詞+指示語
日本語で「この本」と言う際、数を数えるものではないため助数詞(この場合「冊」)は使いません。
ですが、タイ語では名詞に「この、その、あの」といった指示語をつける言い方にも、数字は登場しませんが類別詞(この場合は「レム/lêm/เล่ม」)をつけます。
ここでも、語順がポイントになります。
「名詞+類別詞+指示詞」という順番になります。
その他の例(類別詞+指示語)
先ほど助数詞のところで挙げた名詞を使って、類別詞と指示語を組み合わせた他の例もいくつかご紹介します。
【例2】この携帯
この携帯(電話)
ムートゥー クルアン(グ)ニー
มือถือ เครื่อง นี้
mɨɨthɨ̌ɨ khrɨ̂aŋ níi
【例3】このマンゴー
このマンゴー
マムアン(グ) ルーク ニー
มะม่วง ลูก นี้
mamûaŋ lûuk níi
【例4】その紙
その紙
クラダート ペン ナン
กระดาษ แผ่น นั้น
kradàat phæ̀n nán
【例5】あの日本人
あの日本人
コン・イープン コン ノーン
คนญี่ปุ่น คน โน้น
khon yîipùn khon nóon
名詞を省略するケース
話し手と聞き手の間で「その名詞についての話である」という共通理解があれば、名詞を省略することも可能です
先ほど出てきた「このマンゴー」を例に挙げて、「マンゴー」という単語「マムアン(グ)(mamûaŋ/มะม่วง)」を省略した言い方を見ていきます。
これ
(このマンゴー)
ルーク ニー
ลูก นี้
lûuk níi
(名詞+)類別詞+指示語
目の前にあるマンゴーを見ながら話している会話を例に挙げてみます。
会話に登場する「熟れた」は、タイ語で「スック(sùk/สุก)」と言います。
「これ(=このマンゴー)はまだ熟れていない」
ルーク ニー ヤン(グ) マイ スック
lûuk níi yaŋ mâi sùk
ลูกนี้ยังไม่สุก
※「まだ〜ない」という意味の「ヤン(グ) マイ(yaŋ mâi/ยังไม่)」は第17回講義で出てきました。
(復習される方はこちらからどうぞ)
「これ(=このマンゴー)はもう熟れている」
ルーク ニー スック レーオ
lûuk níi sùk lǽæo
ลูกนี้สุกแล้ว
※「もう〜」という意味の「レーオ(lǽæo/แล้ว)」も第17回講義で出てきました。
(復習される方はこちらからどうぞ)
このように、二人の目の前にあるマンゴーについて話をしている場合、「マンゴー」という単語をあえて言う必要はなく、省略可能です。
類別詞をつけた場合とつけなかった場合のニュアンスの違い
ここまで類別詞について学習してきましたが、この類別詞が入らない言い方というのもあります。
そこで、類別詞が入る場合と入らない場合とでニュアンスがどのように変わるのかを、第13回講義で出てきた「〜がほしい」という表現を使って、「この本がほしい」と言いたい時の表現を使って見ていきます。
【例】この本が欲しい
ナンスー ニー
ฉัน อยากได้ หนังสือ นี้
chán yàak dâai nǎŋsɨ̌ɨ níi
→話し言葉ではこの言い方も可
(その物(対象)を直接指して言うなど、その物が明示できる場合)
→「“この種類の” 本」という、(個体よりも広い)意味で捉えられることも。
ナンスー レム ニー
ฉัน อยากได้ หนังสือ เล่ม นี้
chán yàak dâai nǎŋsɨ̌ɨ lêm níi
→書き言葉
ある物(対象)を特定
※例えば、目の前に本が5〜6冊並んでいる状態で、「この本が欲しい」とある特定の本を伝えたい時は、類別詞「レム(lêm/เล่ม)」を入れることで「他の本ではなく、この本」というニュアンスが出る
まとめ:タイ語の類別詞の概要と、指示語を組み合わせた使い方
本記事では、タイ語の類別詞について、その概要と、日本語の助数詞的な使い方、そして指示語と類別詞を組み合わせた使い方について、その基本的なところを中心にお話ししました。
最後にポイントをまとめます。
タイ語の類別詞は、日本語の助数詞と似ているが、日本語の助数詞よりも幅広い使われ方をする。
「これ(この)、それ(その)、あれ(あの)に相当するタイ語の指示語3種
→名詞+数字+類別詞
→名詞+類別詞+指示詞
類別詞についてはもう少しお伝えしたいことがあるので、別の講義回でもう一度取り上げます。
まずはタイ語の類別詞の基本的な部分について、本講義のポイントとしておさえていただきたいと思います。
本記事は以上になります。お疲れ様でした。
前回(第18回)の講義に戻る場合はこちらからどうぞ。
- 冨田竹二郎編『タイ日大辞典』(めこん)
- 宇戸清治編『パスポート初級タイ語辞典』(白水社)
- 三上直光著『タイ語の基礎』(白水社)
- 松山納著『タイ日・日タイ 簡約タイ語辞典』(大学書林)
- 宇戸清治著『初級タイ語のすべて』(IBCパブリッシング)
- 赤木攻監修 中島マリン・吉川由佳著『間違いだらけのタイ語』(めこん)
- JittiRain著『2gether vol. 1 (เพราะเราคู่กัน 1) 』(everY)※電子書籍(タイ語)