語源(インド系言語)

タイ語単語「คติ(カティ)」の語源【パーリ語】と「คดี(カディー)」との関係

本記事では、タイ語で「行くこと・手本・考え」といった意味を持つ単語「คติカティ(khátì)」の語源と、「คดีカディー(khadii)」との関係を見ていきます。

タイ語「คติ(khátì)」
タイ語 คติ説明
読み
(発音記号)
※カタカナは参考
khátì
(カティ)
意味①行くこと、なり行き
②手本、方式、方法、考え
品詞名詞
原語パーリ語
「คติ(khátì)」を含むタイ語単語のうち、よく出てくるもの
タイ語単語
(読み)※カタカナは参考

:意味
อุดมคติ
(ʔdomm-khátì/ウドム・カティ)
(ʔdomma-khátì/ウドンマ・カティ)

:理想

タイ語「คติ(khátì/カティ)」はパーリ語から来ています。

詳しく見ていきます。

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「偏見」を意味するタイ語「อคติ(アッカティ)」の語源

タイ語「คติ(khátì)」の語源

タイ語「คติ(khátì/カティ)」の語源は、「行くこと、方向」といった意味を持つパーリ語gatiガティ」です。

【語源】パーリ語

パーリ語
gati
説明
単語gati
タイ文字
表記
คติ
意味去ること
行くこと
方向
進路
死去
帰るべき、など
品詞女性名詞

【参考】サンスクリット語

サンスクリット語
गति(gati)
説明
単語
(デーヴァナーガリー文字)
गति
単語
(読み)
gati
(ガティ)


動詞√gamより
※後述します
単語
(タイ文字表記)
คติ
意味行くこと
前進
動作
行動
進路
出口
手段
方法
可能性、など
品詞女性名詞
補足事項①

上表のとおりサンスクリット語にも、パーリ語「gati」と同形の語「gati(गति)」がありますが、タイ語の語源としては『พจนานุกรม ฉบับราชบัณฑิตยสถาน พ.ศ. ๒๕๕๔』『タイ日大辞典』の分類に基づき、「パーリ語」としております。

補足事項②

※こちらでご紹介するサンスクリット語・パーリ語の訳語は、数多くある訳語の中から、タイ語の意味に照らし語源として説明がつく(と思われる)訳語を当サイト著者の独断で選んでおり、恣意的な要素が含まれますことを予めご了承ください。



「คติ(カティ)」と同じ語源のタイ語単語:「คดี(カディー)」

タイ語「คดี(khadii)」の意味と語源

タイ語「คติカティ(khátì)」の語源はパーリ語「gati(ガティ)」であることをここまで見てきました。

このパーリ語「gati(ガティ)」を語源に持つタイ語単語が、実はもう一語あります。

それは「คดีカディー(khadii)」です。

ここでタイ語「คดีカディー(khadii)」の意味を確認してみます。

タイ語「คดี(khadii)」
タイ語 คดี説明
読み
(発音記号)
※カタカナは参考
khadii
(カディー)
意味①道、方面
②事(เรื่อง/rɨ̂aŋ)
③事件、訴訟事件
品詞名詞
語源パーリ語「gati(ガティ)」

【考察1】「t(ต)」から「d(ด)」への変化

先ほど出てきたタイ語単語「คดีカディー(khadii)」に含まれる子音字「ด(d)」は語源分類では「増補字(*)」にあたり、「ด」に対応するサンスクリット/パーリ語の文字はありません

(*1)中性字と原有字ではタイ語を表現するのに不足だったため作り足した文字(参照:『タイ日大辞典』p16)

ですが、サンスクリット/パーリ語の「t※タイ文字表記では[」はしばしば「d]」に置き換えられます(*2)。

このことを踏まえると、インド系言語が語源のタイ語単語にも「ด」の文字が含まれていることがあり、今回の「คดีカディー(khadii)」もそのうちの一語、と言えそうです。

(*2)参照:『タイ日大辞典』 p500

คดีカディー(khadii)」を含む、音が[t]→[d]へ変化したインド系言語が起源のタイ語を集めてみました(と言っても現時点で2語しかありませんが、他の語も出てきたら追記していきます)。

[t]→[d]になったタイ語単語【一例】

タイ語
d]】
原語
(インド系言語)
t]】
สัปดาห์:悪
(sàpdaa/週)

※詳しくはこちら
[サンスクリット語]
saptāha
(サプターハ/सप्ताह
คดี:事、事件
(khadii/カディー)
[パーリ語]
gati
(ガティ)
(※他の語も判明したら追記していきます)

【考察2】母音の変化(短母音「i」→長母音「ii」)

คติカティ(khátì)」と「คดีカディー(khadii)」を比べると、子音「t(ต)」から「d(ด)」への変化に加えて、母音も短母音「i(ิ)」から長母音「ii(ี)」へ変化していることが分かります。

サンスクリット/パーリ語語源のタイ語は数多くありますが、子音字については原語(サンスクリット/パーリ語)通りに残している(ことが多い)一方、母音はタイ人にとって発音のしやすいように変えていることがあるように感じます(私見です)。

บาลีสันสกฤตในภาษาไทย(タイ語)の中でも、「特に語末の母音について、促音節にせず発音しやすくなるよう、短母音を長母音に変えるケースがあった(意訳)」ことが言及されており、「i(ิ)」→「ii(ี)」、「u(ุ)」→「uu(ู)」などに変化した単語が具体例として挙げられています。

挙げられている単語の中に「คดีカディー(khadii)」は入っておりませんでしたが、同様に短母音「i(ิ)」から「ii(ี)」への変化があったものと推察されます。

「คดี(khadii)」を含むタイ語単語のうち、よく出てくるもの

タイ語単語
(読み ※カタカナは参考)

:意味
วรรณคดี
(wanna-khadii/ワンナ・カディー)

:文学
สารคดี
(sǎará-khadii/サーラ・カディー)

:ルポタージュ
ノンフィクション


【参考】サンスクリット語「gati(ガティ)」を分解

サンスクリット語「गतिガティ(gati)」を分解してみます。

サンスクリット語「gati(ガティ)」を分解

動詞(語根)√gam
(ガム/गम्)
:行く

過去(受動)分詞:gata
(ガタ/गत)
:行った


過去分詞(厳密には「過去受動分詞」)は
動詞の語根に主に「ta(タ/)」を添えて作られる。

動作名詞:gati
(ガティ/गति)
:行くこと

「ga(m)」→行く(動詞)
=ค
ti」→〜こと(名詞化)

śāntiशान्ति)の「tiति)」は動作名詞(女性名詞)を作る接尾辞

過去受動分詞の形(語末のta(त)を除いたもの)+「ti(ति)」
 =動作名詞「〜こと」

より分かりやすいためサンスクリット側の語を用いて説明しましたが、パーリ語でも同様接尾辞ti」は動作名詞を作ります。

タイ語では、他にも語末が「ติ[ti]」となっている単語があります(以下の表をご参照)。

語末が「ติ」のタイ語単語[คติを含む]

【タイ語単語】

語末「ติ」
=動作名詞を作る「ti」
語源
ชาติ[châatti
(サンスクリット/パーリ語)
ติ[mámati
(サンスクリット/パーリ語)
ญัตติ[yátñatti
(パーリ語)
ญาติ[yâatñāti
(パーリ語)
ติ[sasati
(パーリ語)
ยุติ [yút]yutti
(パーリ語)
เกียรติ [kìat]kīrti
(サンスクリット語)
สันติ [sǎn]santi
(パーリ語)
อคติ [ʔà-khá]agati
(パーリ語)
คติ [khá]gati
(パーリ語)
※各単語の語源については、クリックいただくと詳細を確認できます



上の表で挙げた単語の語末「ติ」は、すべて動作名詞を作る接尾辞「ti(ति)」がついたことによるものです(一部仮説を含みます)

各単語のページ内でも、タイ語の「ติ[ti]」とサンスクリット/パーリ語の接尾辞「ti(ति)」について解説・考察していますので、よろしければご覧ください。



【まとめ】タイ語「คติ(カティ)」と「คดี(カディー)」の語源

本記事では、タイ語単語「คติカティ(khátì)」の語源と、「คดีカディー(khadii)」との関係について見てきました。

そして、この二つの語の語源は同じ語であることが分かりました。

まとめます。

タイ語「คติ(khátì)」「คดี(khadii)」の語源

タイ語「คติカティ(khátì)」と「คดีカディー(khadii)」の語源

パーリ語
「gati(ガティ)」

本記事は以上になります。

ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

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