タイにお住まいの方の中には、ご自身またはご家族の仕事の都合でタイにいるため、タイでの生活は期間限定でいつかは本帰国を迎える、という方も少なくないと思います。
私自身がそうだったのですが、タイに住んでいる最中は、日本に本帰国した後のことがあまりイメージできなかったんですよね。
特にタイ語については、タイで生活している間は頑張って勉強していたものの、日本へ帰ったらタイ語とは関わりのない生活になるんだろうなぁと、ぼんやりとですが考えていました。
ですが、いざ本帰国してみると、自分が思っていた以上に周りからの「タイ語」への反応があり、それを受けて自分自身にも心境の変化がありました。
その結果、現在に至るまでタイ語と関わりのある生活を送っています。
そんな、本帰国してからの(タイ語に対する)心境の変化に焦点を当て、タイから日本へ本帰国されてから、タイ語の勉強を再び始めたLさん、ランさん(ともに仮名)のお二人にインタビューをさせていただきましたので、その内容をご紹介します。
Lさんのインタビュー内容を本記事に掲載します。
(ランさんのインタビューはこちらから)
ご家族の仕事の関係でバンコクで6年過ごされた後、本帰国されたLさん。
今回Lさんに質問した事項は、具体的に以下の5点です。
- タイでの経験
タイでのタイ語学習歴と習得度合い - タイでの生活で
ーしておけばよかったこと
ーしておいてよかったこと - 本帰国後に再度タイ語を勉強しようと思った理由
- 日本でのタイ語の勉強法
- 今後の目標
在タイ時〜現在に至るまでのタイ語に関わるご自身のご経験を、詳しくお話ししてくださっています。
長めのインタビューになっているのですが、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
では、はじめます。
タイ・バンコクでの経験と、タイ語の学習歴・習得度合い
タイ・バンコクでの生活とタイ語
在タイ1年目は、タイ語を習いました。
知り合いも友達もいない環境でしたので、日本人の奥様クラスを受講し、帰りにランチ等する生活をしていました。
春休みが入り、奥様達は日本へ一時帰国。
一時帰国しなかった私は、次のクラスが始まるまで、繋ぎとしてタイ語のプライベートレッスンを受けることに。
タイ人の先生から「これまで何時間タイ語を習いましたか?」と聞かれ、「100時間」と答えました。
その答えにタイ人先生がビックリされたんですね。
(そんなに習っているのに、全然話せないのですね・・・)
という先生の心の声を聞いてしまったような気がしました。
それからというもの、私は自分の生活を考え直しました。
このまま、何となく…の毎日で良いのだろうか?
同い年の日本の友人達は、仕事に日々苦労したり、子育てしたりの毎日です。
「私も少しは追い込んだ方が良いのかもしれない!」
そこで、タイ語をもっと頑張って、仕事に繋げられれば良いのかも、と考えました。
調べたところ、一日4時間、他の国の生徒も一緒に習うタイ語講座を見つけ、通うことにしました。
チュラロンコン大学の外国人向けタイ語コース「インテンシブ・タイ」です。
毎日宿題も多く、毎朝テスト。
ほぼ一日中タイ語漬けの生活が始まりました。
ハードですが、周りは留学のためにタイに来ている方ばかり。
刺激的でやる気が湧きました!
タイ語の日常会話が(考えながらですが)身についてきたのはこの頃からです。
チュラロンコン大学タイ語コース「Intensive Thai」を受講した感想
チュラロンコン大学の外国人向けタイ語コース「インテンシブタイ」のうち、「Basic 1」から「Basic 3」までを受講しました。
1レベル100時間、合計で300時間。
「インテンシブ・タイ」での授業は、宿題が多くとても大変でした。
一方で、授業に出ると、授業前に「昨日は囲碁をした。君は、囲碁をしたことがあるか?」など話しているアメリカ人がいたり、先生の質問に面白可愛く答えるフランス人がいたりと、クラスでは笑いも多くインターナショナルスクールを体験できたことが嬉しかったです。
ある授業では、自国の料理を持ってきて、なぜその料理を持ってきたのかを説明する、という時間がありました。
私はおにぎりを、クラスメイトのアメリカ人はホットドック、フィンランド人はアイスクリームなどを持ってきていました。
また、プレゼンの授業で、何かと何かを比べて皆さんの前で、タイ語で説明するというのがありました。
思い出してみると、
他の人が何を話すかをよく聞く
という授業が多かったです。
教科書にはない、とても面白い授業でした。
また、様々な国の方と共通語がタイ語という、とても変わった、でもとても貴重な時間を過ごすことができました。
【体験談】チュラロンコン大学外国人向けタイ語コース[インテンシブタイ]レベル別学習内容
タイ語検定準2級の難易度[チュラ大レベルと比較]と、インテンシブタイでタイ語を勉強するメリットとは?
Lさんの在タイ中のタイ語学習歴
- バンコクの語学学校での、日本語によるグループレッスン
約6ヶ月、100時間程度
(自宅では、ほぼ復習せず) - 自宅での、日本語によるプライベートレッスン
約1ヶ月、20時間程度
(自宅では、ほぼ復習せず) - チュラロンコン大学・タイ語コース「Intensive Thai」での、英語、タイ語によるグループレッスン
一日4時間で約4ヶ月、300時間
BASIC 1からBASIC 3を受講
(自宅では、宿題と復習に一日3時間)
①~③で、通算1年ほどタイ語を勉強しました。
読み書きは、①と③の時に学び、特に③の時にはタイ文字の辞書を引く毎日でした。
チュラでの300時間のタイ語学習を終えて
チュラで300時間勉強してBASIC 3が終了。
さらに上のコース(中級・上級)もありますが、進まないことにしました。
レベルがとても高く、これ以上はついて行けないと思ったからです。
家に帰っても、タイ語ばかりになるのもストレスを感じ始めていました。
チュラでの学習が終了後、タイ語の勉強は、会話の所が時々、気になってチュラの教科書を開いて復習をする程度になりました。
タイ人に日本語を教える機会ができ、今度は「日本語を教えるための日本語の勉強」をしたいと思い始め、タイ語は会話が通じれば十分と思うようになりました。
タイ文字に関しては「読める単語や文章もある」という程度でよし、と思うように。
タイ人とのやりとりは、日本語を教え始めた頃から徐々に増えていき、習い事でもタイ人とはタイ語で話すようになり、在タイ中の6年間で簡単な日常会話はできるようになりました。
タイの生活で、しておけばよかったことと、しておいてよかったこと
逆に「これをやっておいてよかった」ということがあれば、そちらもあわせてお聞かせください。
タイに長く住んでいたと伝えると、会社の方、友人からよく聞かれるのはタイ料理のことです。
日本にはタイ料理のお店がたくさんあり、とても人気があります。
一緒に行くと、食材や調味料のことを聞かれます。
私は、1ヶ月程10種類のタイ料理を習った経験があるのと、実際にタイでの屋台やレストランのタイ料理を食べた経験から、聞かれたことに対し答えることはできます。
ですが、もっと色々知識があったらよかったなぁと。
「食材をタイ語では何と言うか?」をタイで覚えておけばもっと早く頭に入ったのに…、と感じることがあります。
【タイ語単語】調理時に使える動詞一覧【タイ料理】[アヤさんへの説明にも]
それともう1点、タイの地方への旅行をもっとしてもよかったと思います。
バンコクでは日本とそこまで変わらない生活ができますが、タイの地方へ行けば違う日常を体験できたかな、と。
お風呂、トイレ、食事、家の造りや環境の違いに興味があります。
アジア周辺への旅行はしておいてよかったです。
バンコクは空港への往復が便利です。日本からよりも行きやすいです。
また、習い事を通じて、他の国の友達ができました。
その友達が日本語を習いたいとのこと、私もその友達の国の言語を習いたいと思い、タイ語を使ってのエクスチェンジが始まりました。
教科書を選ぶのも初めてで、とても新鮮でした。
「教えるのは楽しいな」「語学って楽しいな」と思うようになりました。
一番の習得は、外国人の友達が「何を言いたいのか?」「何を求めているのか?」を聞き取ること、感じとることが楽しいと思えたことです。
今でもその友達とは良い関係を築くことができ、日本でも会うことができています。
その後、タイ語で日本語をもっと教えてみたいと思い、その機会に恵まれました。
タイ人の方で日本語に興味のある方が非常に多くいらっしゃることに驚きました。
タイの文化、タイ人が何を求めているのかが日々分かってくるのと、日本に興味を持ってくれることが嬉しいのとで、私はタイでの生活をより一層楽しむようになりました。
タイに住む前は、一度タイへ旅行したのみでした。
一週間の旅行では、島での綺麗な海と、バンコクの大都会、観光スポットが沢山あり、住んでみたらきっと楽しいだろう…と思うくらいで、まさか本当に住むことになるとは思ってもみませんでした。
本帰国した今でも、バンコクで出会った友達と日本で会うと、バンコクライフの時が戻ってきたように盛り上がります。
バンコクでの生活は、苦労もありましたが視野が広がった、とても良い人生経験となりました。
日本へ帰国した後に、タイ語をもう一度勉強しようと思った理由
本帰国して3年が経った頃、訪日された外国人観光客の方に着物を着せ付けて写真を撮る仕事をしてみたいと思い、応募したところ、
「タイ語はどの程度できますか?タイ語でブログが書ける程度のレベルであれば、タイ人のお客様を集客できるかもしれないのでありがたい」
というようなことを面接で言われました。
ですが、その時点で私ができたのはタイ語の簡単な日常会話のみで、タイ文字でタイピングの経験も当時はなく、その仕事に関しては保留となってしまいました。
その翌年、タイで日本語ボランティアをしていた頃に出会った友達と再会する機会がありました。
その友達の一人が仕事でタイ語を使っていると知りました。
その友人からタイ語を教えますよ、と声をかけていただき、もう一人の友達と一緒のタイミングでタイ語の勉強を再開することになりました。
タイ語、タイ文字を勉強し直すことで、タイ語に関する仕事ができるかもしれないと思ったからです。
週に一度レッスンを受けるようになりました。
本帰国して数年間、タイ語からは離れていたのですが、タイ文字を書いていると気分が落ち着き、帰国してもなお(帰国したからこそ)タイの文化に触れる楽しみができました。
日本でのタイ語の勉強方法
最初の2年半程は、日本人の先生(当ブログ運営者Sripasa、以下S先生)が作成されたテキストや、タイ語の教科書を利用して週に1度、75分のプライベートレッスンを受けていました。
初めの1年程は実際に会って教えていただき、その後はSkypeやFaceTimeでのオンラインでのレッスンでした。
毎回のように、レッスンの始めは単語テスト、時には文章のテストをしていただき、そのために一週間、テスト勉強をしました。
テストのためと思ったほうが練習をするので、大変良いレッスンだったと思います。
S先生は、単語の由来などにも詳しい先生でしたので、とても面白いレッスンでもありました。
最もありがたいと思ったのは、S先生が独自で作成された、タイ文字のテキストです。
タイで習ったものの、母音、子音のことなどを深く理解していないままだったタイ文字。
タイで使用していた教科書はタイ人の方が作成したものだったため、正直分かりにくい物が多かったのですが、S先生が作成されたテキストは、日本人の先生による日本人のためのものだけあって、分かりやすいもので頭が整理されました。
タイ文字が楽しいと思えたきっかけでもあります。
その後、S先生のご都合でレッスンが難しくなったので、日本語を勉強中の在日のタイ人(Bさん)をS先生が紹介してくださいました。
昨年から、そのタイ人のB先生に『中級タイ語総合読本』を利用してオンライン(FaceTimeを利用)で2週間に1〜2度、2時間位教わっています。
B先生はタイの方なので、発音には熱心になっていただいて、いつも注意を受けます。
また、タイの方独特の空気感がオンラインでも伝わるので、とても面白いです。
B先生は日本語も勉強中なので、レッスン中に私が気になった日本語を最後に指摘しています。
最近は、日本語がよく通じるようになったと喜んでいただけています。
2020年の4〜5月の自粛期間は時間ができたので、新しい文法で作文をすることに加え、以前のようにテストも準備していただき、私もテスト勉強をしました。
B先生自身も勉強があり私も仕事があり、と忙しい中ですが、タイに触れることができる貴重な時間で、終わった後はいつも充実した気持ちになれます。
これからも、続けられたらいいなと思います。
【タイ語本】独学でタイ語を勉強する方におすすめの学習教材【テキスト・音声】(初心者~中級)
タイ語に関する今後の目標
- 現在使用している中級のテキストを終わらせる
- 実用タイ語検定3級・準2級への合格
- 将来的にタイ語を使って仕事がしたい
まずは、タイ語の中級の教科書(『中級タイ語総合読本』)を最後まで学習したいです。
並行して、実用タイ語検定3級・準2級まで取得できるように学習を進め、タイ語のニュースが聴けるくらいのタイ語レベルになること。
そして将来的には、タイ語を使って仕事がしたいと考えています。
高い目標ですが、期限は設けず気長に続けることをまずは第一に。
趣味であるタイ語の勉強を続けていくことで、将来的に仕事にも繋げられたら、と考えています。
実用タイ語検定3級受験に向けた効果的な勉強方法とは?|私が考える試験対策のポイントを丁寧に解説
独学で『実用タイ語検定試験』準2級に合格するために必要な3つのこと【勉強法】
お話をお伺いした感想
今回、Lさんのお話をお伺いして感じたこと。
それは、
-
- タイ語が話せること
- タイについて知っていること
(タイ料理のこと等)
など、タイに住んでいると
「ある程度できて(または知っていて)当たり前だよね」
と認識されるこういったことが、日本に帰国すると自分が思っている以上に価値がある(=希少価値がある)ということなんですよね。
私自身、本帰国するまでは、日本へ帰国後にタイ語に関わることをそこまで考えていなかったのですが、実際に本帰国して色々な方とお話しする中で、
「タイ語を使わないのはもったいない」
というようなことを複数の方から言われたんですね。
他にも理由はあるのですが、周りの方からこう言っていただいたのも「自分のタイ語を活かす方法を考えてみよう」と思い至る理由の一つになりました。
現在(2020年6月29日に執筆)は、私が本帰国したころとは状況が変わっています。
新型コロナウイルスの影響でインバウンド業界も厳しい状況が続いており、タイ語関連の仕事についても例外ではない、と感じています。
一日も早い終息を願うとともに、今は自身の語学レベルを上げることに注力して、次にチャンスが来たときにしっかりそのチャンスを掴めるように、少しずつでも勉強を続けていくことが今できることではないか、と思っております。
そして以下余談。
Lさんのお話の中にも出てきましたが、一時期Lさんにタイ語(特にタイ文字)を教えていたんですね。
あの時のレッスンが、今も楽しんでタイ語を学ばれているきっかけの一つになったみたいで、私としても嬉しい限りです。
※現在はレッスンを行なっておりません。
Lさんがこれからも継続して学習していけるよう、応援しております。
今回はインタビューへのご協力、ありがとうございました。
(インタビューは2020年6月に実施しました)
インタビュー記事(第二弾)はこちらからどうぞ。