『独学で勉強しよう!超初心者向けタイ語講座』の第23回です。
第23回講義のポイントは、タイ語で過去の経験を表す言い方です。
具体的には「〜したことがある」と「〜したことがない」という表現を見ていきます。
本講義のポイントと例文を確認した後、タイの人気BLドラマ『プロ・ラオ・クーガン/2gether The Series』に出てくるセリフ(ワンフレーズ)を2シーンご紹介します。
そして最後にもう一度、本記事のポイントをおさらいします。
※タイドラマのセリフを先にチェックしたい方は、こちらのリンクから該当部分(本記事後半)をご確認いただけます。
では、はじめます。
タイ語の経験・未経験の表現
本講義のテーマはタイ語の経験と未経験を表す言い方です。
タイ語の「経験」「未経験」を表す言い方のポイント
タイ語の「経験」・「未経験」表現のポイントは以下の2点です。
【過去の経験】
動詞(形容詞)
「クーイ/khəəi/เคย」+【未経験】
動詞(形容詞)
「マイ・クーイ/mâi khəəi/ไม่เคย」+例文を見ていきます。
例文から見る、タイ語の経験(未経験)表現の作り方
【例文1】その友人は日本語を勉強したことがある
最初にご紹介する例文は、「その友人は日本語を勉強したことがある」という過去の経験を伝える文章です。
phɨ̂an khon nán khəəi rian phaasǎa yîipùn
เพื่อนคนนั้น เคย เรียน ภาษาญี่ปุ่น
その友人は日本語を勉強したことがある
主語
(プーアン・コン・ナン
/その友人)
+
クーイ
「〜したことがある」
【過去の経験】
+
動詞
(リアン/勉強する)
+
目的語
(パーサー・イープン/日本語)
「〜したことがある」という意味を持つ「クーイ/khəəi/เคย」の位置は、「主語」と「動詞(形容詞)」の間です。
単語 | 意味 |
---|---|
プーアン (phɨ̂an) (เพื่อน) | 友人 ※プーアン・コン・ナン:「その友人」 (名詞+類別詞+指示語) (第19回講義でご確認ください) |
リアン (rian/เรียน) | 勉強する (動詞) |
パーサー・イープン (phaasǎa yîipùn) (ภาษาญี่ปุ่น) | 日本語 |
【例文2】私はサムイ島に行ったことがない
続いての例文は、「私はサムイ島に行ったことがない」という、未経験であることを伝える文章です。
chán mâi khəəi pai kɔ̀ samui
ฉัน ไม่เคย ไป เกาะสมุย
私はサムイ島に行ったことがない
「クーイ/khəəi/เคย」と同様に、「主語」と「動詞(形容詞)」の間に「マイ・クーイ/mâi khəəi/ไม่เคย」を入れることで、「〜したことがない」という文章になります。
主語
(チャン/私)
+
マイ・クーイ
「〜したことがない」
【未経験】
+
動詞
(パイ/行く)
+
目的語
(コ・サムイ/サムイ島)
「〜したことがない」という上記の文章に、ニュアンスを加える表現を3種ご紹介します。
これまでに〜したことがない
これまでに全く〜したことがない
(まだ(全く)〜したことがない)
①「これまでに」を追加
マー ゴーン
chán mâi khəəi pai kɔ̀ samui maa kɔ̀ɔn
ฉัน ไม่เคย ไป เกาะสมุย มาก่อน
私はこれまでにサムイ島に行ったことがない
「したことがない」を意味する「マイ クーイ(mâi khəəi/ไม่เคย)」に「マー ゴーン(maa kɔ̀ɔn/มาก่อน)」を加えて、「これまでに」というニュアンスを付加します。
「マー ゴーン(maa kɔ̀ɔn/มาก่อน)」は文末に来るのが特徴です。
マイ・クーイ …… マー ゴーン
mâi khəəi …… maa kɔ̀ɔn
ไม่ เคย …… มา ก่อน
これまでに〜したことがない
②「これまでに全く」を追加
マー ゴーン ルーイ
chán mâi khəəi pai kɔ̀ samui maa kɔ̀ɔn ləəi
ฉัน ไม่เคย ไป เกาะสมุย มาก่อนเลย
私はこれまでに全く(一度も)サムイ島に行ったことがない
第4回講義で「全然〜ない」と言う際の表現「マイ…ルーイ(mâi ləəi/ไม่เลย)」が出てきました。
マイ … ルーイ
mâi … ləəi
ไม่ … เลย
全然〜ない
①で見た「マイ クーイ……マー ゴーン/mâi khəəi……maa kɔ̀ɔn/ไม่เคย……มาก่อน」に「ルーイ(ləəi/เลย)」を加えると、「これまでに全く(一度も)〜したことがない」という未経験を強調する表現となります。
「ルーイ(ləəi/เลย)」は「マー ゴーン(maa kɔ̀ɔn/มาก่อน)」の後ろに置きます。
マイ・クーイ …… マー ゴーン ルーイ
mâi khəəi …… maa kɔ̀ɔn ləəi
ไม่ เคย …… มา ก่อน เลย
これまでに全く(=一度も)〜したことがない
③「まだ」を追加
ヤン(グ)マイ クーイ パイ コ・サムイ
chán yaŋ mâi khəəi pai kɔ̀ samǔi
ฉัน ยัง ไม่เคย ไป เกาะสมุย
私はまだサムイ島に行ったことがない
「ヤン(グ)(yaŋ/ยัง)」は、「完了(未完了)」について学習した第17回講義で出てきました。
このように未経験を表す「マイ クーイ(mâi khəəi/ไม่เคย)」と組み合わせて、「まだ〜したことがない」という意味で用いることも可能です。
「ヤン(グ)(yaŋ/ยัง)」は「マイ クーイ(mâi khəəi/ไม่เคย)」の前に置きます。
ヤン(グ)マイ・クーイ ……
yaŋ mâi khəəi ……
ยัง ไม่ เคย ……
まだ〜したことがない
「ヤン(グ)マイ クーイ(yaŋ mâi khəəi/ยังไม่เคย)」の文末に、②で見た「ルーイ(ləəi/เลย)」をつけて「まだ全く(一度も)〜したことがない」と未経験を強調する言い方も可能です。
ヤン(グ)マイ・クーイ …… ルーイ
yaŋ mâi khəəi …… ləəi
ยัง ไม่ เคย …… เลย
まだ全く(=一度も)〜したことがない
単語 | 意味 |
---|---|
パイ (pai/ไป) | 行く(動詞) |
コ (kɔ̀/เกาะ) | 島 ※コ・サムイ (kɔ̀ samǔi/เกาะสมุย) :サムイ島 |
タイ語で島の名前を言う場合は、「島」を意味するタイ語「コ(kɔ̀/เกาะ)」の後ろに島の名前をつけます。
- サムイ島
:コ・サムイ
(kɔ̀ samǔi/เกาะสมุย) - プーケット島
:コ・プーケッ(ト)
(kɔ̀ phuukèt/เกาะภูเก็ต) - サメット島
:コ・サメッ(ト)
(kɔ̀ samèt/เกาะเสม็ด) - チャーン島
:コ・チャーン(グ)
(kɔ̀ cháaŋ/เกาะช้าง) - タオ島
:コ・タオ
(kɔ̀ tào/เกาะเต่า) - クレット島
:コ・クレッ(ト)
(kɔ̀ krèt/เกาะเกร็ด)
【例文3】誰も好きになったことがない
「クーイ/khəəi/เคย」や「マイ・クーイ/mâi khəəi/ไม่เคย」の後ろは必ずしも動詞である必要はありません。
例えば「好きな」を意味する形容詞「チョープ(chɔ̂ɔp/ชอบ)」であっても、以下のように経験(未経験)を表現することが可能です。
chán mâi khəəi chɔ̂ɔp khrai ləəi
ฉัน ไม่เคย ชอบ ใคร เลย
私は全く誰も好きになったことがない
単語 | 意味 |
---|---|
クライ (khrai) (ใคร) | 誰 誰か 誰でも (否定文で)誰も(〜ない) |
【例文4】刺身を食べたことがありますか?
最後の例文は、疑問文です。
第11回講義で出てきた「マイ(ไหม)」を使った疑問文です。
【例文4】質問
khun khəəi kin plaa dìp maa kɔ̀ɔn mái khá
คุณ เคย กิน ปลาดิบ มา ก่อน ไหม คะ
(あなたは)これまでに生魚(刺身)を食べたことがありますか?
※話し手は女性
khun khəəi kin plaa dìp maa kɔ̀ɔn mái khráp
คุณ เคย กิน ปลาดิบ มา ก่อน ไหม ครับ
(あなたは)これまでに刺身を食べたことがありますか?
※話し手は男性
プラー・ディッ(プ)は、「魚」を意味する「プラー」と「生の(火が入っていない)」を意味する「ディッ(プ)」からなる語です。
最近は「サーチミ(saachimí/ซาชิมิ)」と日本語からの借用語も比較的タイに浸透しています。
【例文4】返事の仕方
khəəi khâ
เคย ค่ะ
はい(、したことがあります)。
※話し手は女性
khəəi khráp
เคย ครับ
はい(、したことがあります)。
※話し手は男性
mâi khəəi khâ
ไม่เคย ค่ะ
いいえ(、したことがありません)。
※話し手は女性
mâi khəəi khráp
ไม่เคย ครับ
いいえ(、したことがありません)。
※話し手は男性
単語 | 意味 |
---|---|
クン (khun) (คุณ) | あなた |
キン (kin) (กิน) | 食べる |
プラー (plaa) (ปลา) | 魚 |
ディッ(プ) (dìp) (ดิบ) | 生の 熟していない ※プラー・ディッ(プ) (plaa dìp/ปลาดิบ) :刺身 |
動画でみる、タイ語の経験・未経験の表現
ここからはドラマに出てくるセリフをご紹介していきます。
タイのBLドラマ『プロ・ラオ・クーガン/2gether The Series』のシーンを見ていきます。
全部で2シーンあります。
どちらも「未経験」の表現になります。
タイのBLドラマ『2gether』のセリフ①
Sarawatの部屋にSarawatのお母さんと弟(Phukong)が来て、Tineと4人で話すシーンでのお母さんの一言。
(この会話内の別のシーンは、第15回講義、第21回講義でも登場しています。どうぞあわせてご確認ください)
ไทน์ รู้มั้ย วัตรเนี่ยไม่เคยมีแฟนมาก่อนเลย
(タイ ルーマイ ワッ(ト)ニア マイ クーイ ミー フェーン マー ゴーン ルーイ)จริงเหรอครับ
出所(ที่มา):เพราะเราคู่กัน 2gether The Series EP.4 2/4 1:03~1:08
(チン ルー クラップ)
※括弧書きは本記事の著者によるもの
Tine rúu mái
ワッ(ト)ニア マイ クーイ ミー フェーン マー ゴーン ルーイ
Wát nîa mâi khəəi mii fææn maa kɔ̀ɔn ləəi
2つの文章からなるセリフのため、分けて解説していきます。
文
それに続く「マイ」は疑問文を作る語です(詳しくは第11回講義をご確認ください)。
「ルー マイ」で「知ってる?」と尋ねる文章です。
文
に進みます。ポイントは、本講義で見てきた「〜したことがない」の部分です。
一部ピックアップしてみます。
マイ クーイ ミー フェーン マー ゴーン ルーイ
mâi khəəi mii fææn maa kɔ̀ɔn ləəi
「マイ・クーイ …… マー ゴーン ルーイ」で「これまでに全く(=一度も)〜したことがない」という意味になるということを【例文2】の中で確認しました。
間に入っている「ミー フェーン」は「恋人がいる」という意味の表現です。
(「いる」を意味する「ミー(mii/มี)」については、こちらで詳しく解説しています)
「マイ・クーイ ミー フェーン マー ゴーン ルーイ」で、「これまでに一度も恋人がいたことがない」となります。
文頭の「ワッ(ト)/Wat」は「サラワット/Sarawat」の省略形です。
それに続く「ニア」は、強調の意で用いられる語です。
文末に来ることが比較的多いですが、このようにそれ以外の場所に来ることもあります。
タイ ルーマイ
ワッ(ト)ニア マイ クーイ ミー フェーン マー ゴーン ルーイ
Tine rúu mái
Wát nîa mâi khəəi mii fææn maa kɔ̀ɔn ləəi
Wat(=Sarawat)はね、これまでに一度も恋人がいたことがないのよ。
チン ルー クラップ
ciŋ rə̌ə khráp
そのお母さんのセリフに対するTineの返事です。
「チン(グ)」は「本当の」という意味の語、それに続く「ルー」は第21回講義で出てきた疑問文を作る語「ルー(rɨ̌ɨ/หรือ)」の口語表現「ルー(rə̌ə/เหรอ)」です。
ここでは話し手(Tine)にとっての意外な感情を表しながら「本当ですか?」と確認する一文と言えそうです。
チン ルー クラップ
ciŋ rə̌ə khráp
そうなんですか。
単語 | 意味 |
---|---|
ルー (rúu) (รู้) | 知る 知っている 分かる (動詞) |
ニア (nîa) (เนี่ย) | 強調の意で用いられる |
ミー (mii) (มี) | いる、ある 持っている |
フェーン (fææn) (แฟน) | 恋人 |
チン(グ) (ciŋ) (จริง) | 本当の 本物の |
タイのBLドラマ『2gether』のセリフ②
GreenとP’Dimが仲直りするシーンでの、Greenの一言。
กรีนนะ ไม่เคยโกรธพี่หรอก
出所(ที่มา):เพราะเราคู่กัน 2gether The Series EP.7 2/4 2:33~2:36
(グリーン ナ マイ クーイ グロー(ト)ピー ロー(ク))
※括弧書きは本記事の著者によるもの
グリーン ナ マイ クーイ グロー(ト)ピー ロー(ク)
Green ná mâi khəəi kròot phîi rɔ̀ɔk
ポイントをピックアップしてみます。
マイ クーイ グロー(ト)ピー
mâi khəəi kròot phîi
「グロー(ト)」は「怒る」という意味の語です。
それに続く「ピー」は年が上の方に用いる敬称です。
「マイ クーイ グロー(ト)ピー」で「先輩(ここではP’Dimのこと)に対して怒ったことがない」となります。
文末の「ロー(ク)」は「〜だよ、〜さ」といった意味を付加する語です。否定文でよく用いられます。
Green ná mâi khəəi kròot phîi rɔ̀ɔk
Green(自分のこと)はね、先輩(P’Dimのこと)を怒ったことはないのよ。
単語 | 意味 |
---|---|
ナ (ná) (นะ) | 相手に同意を求めるや強調したい時などに使われる、親密で柔らかい表現 日本語の「~ね、~よ」に相当 |
グロー(ト) (kròot) (โกรธ) | 怒る |
ピー (phîi) (พี่) | 兄、姉、先輩に対して用いる敬称 「ピー+ニックネーム」で使うことも多い。 ※下の者に対して「自分(僕・私)」を指す言葉として使うことも |
ロー(ク) (rɔ̀ɔk) (หรอก) | 「〜だよ、〜さ、〜だわ」 主に否定文の文末に来て「相手の考え・期待に対し、そうではないということを軽く主張する」意味を付加する |
おさらい|タイ語講座第23回のポイント
タイ語講座第23回の本記事では、タイ語の経験(未経験)の表現について説明しました。
【過去の経験】
動詞(形容詞)
「クーイ/khəəi/เคย」+【未経験】
動詞(形容詞)
「マイ・クーイ/mâi khəəi/ไม่ เคย」+第23回はここまでです。お疲れ様でした。
第22回に戻る場合はこちらからどうぞ。
- 冨田竹二郎編『タイ日大辞典』(めこん)
- 宇戸清治編『パスポート初級タイ語辞典』(白水社)
- 三上直光著『タイ語の基礎』(白水社)
- 宇戸清治著『初級タイ語のすべて』(IBCパブリッシング)
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