『独学で勉強しよう!超初心者向けタイ語講座』応用編の第3回です。
本講義では、第20回講義『類別詞について②』の中に出てきた「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」の使い方について詳しく見ていきます。
「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」には大きく2種類の使い方があり、「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」の後ろに動詞が来るか名詞が来るかで、その意味は異なります。
コー(ขอ)+動詞+ノイ(หน่อย):〜させてください
コー(ขอ)+名詞:〜をください
この大きな違いを知っておくと、スムーズに使っていけると思います。
本講義では、この、それぞれの例を説明します。
また、慣用表現など、例外的な使われ方をするケースもあり、そちらも一部ですがあわせてご紹介します。
その後、タイのBLドラマ『2gether The Series』に出てくるセリフの中から、実際に「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」が使われているシーンを(1シーンですが)ピックアップしてご紹介します。
※タイドラマのセリフを先にチェックしたい方は、こちらのリンクから該当部分(本記事後半)をご確認いただけます。
では、はじめます。
タイ語単語「コー(ขอ)」の意味
まずはじめに、「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」自体の持つ意味を確認しましょう。
「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」は動詞で「乞う、求める、頼む」といった意味を持っています。
| タイ語単語 | 意味 |
|---|---|
| コー khɔ̌ɔ ขอ | 乞う 求める 頼む (動詞) |
元々のこれらの意味が、今から説明する「〜させてください」や「〜をください」といった意味につながっていきます。
それでは、早速見ていきます。
まずは動詞と組み合わせた例です。
コー(ขอ)の使い方①:コー+動詞
コー(ขอ)+動詞+ノイ(หน่อย)「〜させてください」
「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」+動詞+「ノイ/nɔ̀i/หน่อย)」
〜させてください
このフレーズのポイントは、動詞の行為の主体者は話し手(=自分がその行為をさせてもらう)ということです。
また、「ノイ/nɔ̀i/หน่อย)」は「ちょっと」という意味で、依頼文につけるとやわらかい表現になります(『間違いだらけのタイ語』p65)。
例文を見ていきます。
【例文1】これを見せてください
最初の例文は、タイドラマ『転校生ナノ(เด็กใหม่/dèk mài)』に出てきたセリフをご紹介します。
(『転校生ナノ』はNetflixで視聴可能です。こちらでも詳しくご紹介しています)
お店で腕時計を見ていた男性が、店員さんにかけた一言です。
コー ドゥー ルアン ニー ノイ クラップ
khɔ̌ɔ duu rɨan níi nɔ̀i khráp
ขอดูเรือนนี้หน่อยครับ
これ(この腕時計)を見せてください。
「コー」に続く「ドゥー/duu/ดู」は、「見る」という意味の動詞です。
「コー ドゥー(khɔ̌ɔ duu/ขอดู)」とその少し後ろにくる「ノイ(nɔ̀i/หน่อย)」で、「見せてください」という文になります。
コー ドゥー …… ノイ
khɔ̌ɔ duu …… nɔ̀i
ขอดู …… หน่อย
…… を見せてください
ここでのポイントは、「見る」のは「相手」ではなく「自分」で、「自分が見せてもらう」という意味になる点です。
相手に「見てもらう」という意味にはならないので注意が必要です。
自分が見るのではなく相手に「見てもらいたい」場合は、「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」ではなく「チュアイ/chûai/ช่วย」を使う必要があります。
この点については「タイ人に何かを依頼したいときに使えるフレーズ2種」の中で詳しくお話ししていますので、どうぞあわせてご覧ください。
また、ここでは「ルアン(rɨan/เรือน)」という単語が出てきました。
これは時計を意味するタイ語「ナーリカー(naalikaa/นาฬิกา)」の類別詞です。
腕時計(ナーリカー・コー・ムー(naalikaa khɔ̂ɔ mɨɨ/นาฬิกาข้อมือ)」の場合も同様に、類別詞「ルアン(rɨan/เรือน)」を使います。
「ルアン・ニー(rɨan níi/เรือนนี้)」で「これ=この腕時計」という意味になります。
ルアン ニー
rɨan níi
เรือนนี้
これ(=この腕時計)
類別詞については、第19回講義『類別詞について①』・第20回講義『類別詞について②』の中で詳しくお話ししています。
コー(ขอ)の使い方②:コー+名詞
続いては、「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」と名詞と組み合わせたケースです。
コー(ขอ)+名詞「〜をください」
(主語)+「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」+名詞
〜(を)ください
具体的に見ていきます。
【例文2】シンハービールをください
レストランで注文する際のフレーズを例に挙げてみます。
(ポム)コー ビア・シン クラップ
(phǒm)khɔ̌ɔ bia sǐŋ khráp
(ผม)ขอ เบียร์ สิงห์ ครับ
シンハービールをください。
(チャン)コー ビア・シン カ
(chán)khɔ̌ɔ bia sǐŋ khâ
(ฉัน)ขอ เบียร์ สิงห์ ค่ะ
シンハービールをください。
「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」の後ろには、「ビア・シン(シンハービール)」という名詞が来ています。
「コー ビア・シン」で「シンハービールをください」という意味になります。

「コー」を使ったその他の例【慣用表現など】
「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」を使ったその他の例も2種ご紹介します。
①急ぎでお願いします
料理などを注文して急いで持ってきてもらいたいときに使える表現です。
急ぎでお願いします、お腹ペコペコなので。
コー ドゥアン ナ カ
khɔ̌ɔ dùan ná khá
ขอ ด่วน นะคะ
ヒウ マーク カ
hǐu mâak khâ
หิว มาก ค่ะ
急ぎでお願いします、お腹ペコペコなので。
コー ドゥアン ナ クラップ
khɔ̌ɔ dùan ná khráp
ขอ ด่วน นะครับ
ヒウ マーク クラップ
hǐu mâak khráp
หิว มาก ครับ
「ドゥアン(dùan/ด่วน)」は厳密には「急ぎの」という意味の修飾語ですが、ここでは「コー(khɔ̌ɔ/ขอ)+名詞」の意味として使われている言えるのではないかと思います(「急がせてください」ではない)。
日本語の「急ぎでお願いします」というニュアンスと非常に近いのではないかと思います。
なお、タイ人の知人に聞いてみたところ、この「急いで(料理を持ってきて)ください」を文法的に正しくいうならば以下のような文章になるとのこと。
チュアイ レン(グ) アーハーン ハイ レオ ノイ ナ カ
chûai rêŋ ʔaahǎan hâi reo nɔ̀i ná khá
ช่วย เร่ง อาหาร ให้ เร็ว หน่อย นะคะ
もちろんこのように言っても問題ないのですが、少し長いですよね。
そういうこともあってか、会話では「コー ドゥアン(ขอด่วน)」という簡潔な表現が慣用表現として使われているようです。
また、例文の後半の文章に出てくる「ヒウ(hǐu/หิว)」は、「お腹が空いた」という意味の語です。
それに続く「マーク(mâak/มาก)」は「とても」を意味する語です。こちらは第4回講義で出てきました。
②タイ語でのお祝いやお悔やみ表現
続いての「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」を使った表現は、お祝いやお悔やみの慣用表現です。
「おめでとうございます」をタイ語で
卒業された方、結婚する方、試験に合格された方などへお祝いの気持ちを伝える際に使える一文です。
おめでとうございます
ขอแสดงความยินดีด้วยค่ะ
khɔ̌ɔ sadææŋ khwaam-yindii dûai khâ
コー サデーン(グ) クワーム・インディー ドゥアイ カ
おめでとうございます
ขอ แสดง ความยินดี ด้วย ครับ
khɔ̌ɔ sadææŋ khwaam-yindii dûai khráp
コー サデーン(グ) クワーム・インディー ドゥアイ クラップ
「コー(khɔ̌ɔ/ขอ)」に続く「サデーン(グ)(sadææŋ/แสดง)」は、「示す、表す、表明する」といった意味を持つ動詞です。
ですので、この文章は「〜させてください」という意味の「コー(khɔ̌ɔ/ขอ)+動詞」の構文です。
コー サデーン(グ)で「示させてください、表明させてください」といった意味になります。
(「表明する」のはこちら側(話し手))
それに続く「クワーム・インディー」は「喜び」という意味の名詞です。
ですので、この文章全体を直訳すると、
喜びを表明させてください
↓
おめでとうございます
という意味につながります。
なお、もう少しくだけた言い方だと「インディー・ドゥアイ(yindii dûai/ยินดีด้วย)」という表現もあります。
先ほどのが「おめでとうございます」とすると、こちらは「おめでとう」というニュアンスです。
親しい間柄でしたらもちろんこちらでも大丈夫です。
「お悔やみ申し上げます」をタイ語で
お悔やみ申し上げます
ขอ แสดง ความเสียใจ ด้วย ค่ะ
khɔ̌ɔ sadææŋ khwaam-sǐacai dûai khâ
コー サデーン(グ) クワーム・シアジャイ ドゥアイ カ
お悔やみ申し上げます
ขอ แสดง ความเสียใจ ด้วย ครับ
khɔ̌ɔ sadææŋ khwaam-sǐacai dûai khráp
コー サデーン(グ) クワーム・シアジャイ ドゥアイ クラップ
「おめでとうございます」の文章と比べ、異なる点は「クワーム・シアジャイ」の部分です。
この語は「悲しみ」という意味の名詞です。
つまりこの文章全体で
悲しみを表明させてください
↓
お悔やみ申し上げます
となります。
タイドラマでみる、「コー」の使い方
最後に、タイのBLドラマ『プロ・ラオ・クーガン/2gether The Series』に出てくるセリフを見てみましょう。
タイのBLドラマ『2gether』のセリフ「食べさせて」
一緒に生活を始めたSarawatとTine。
料理を独り占めして食べようとするSarawatにTineが言った一言。
ขอกินหน่อย
出所(ที่มา):เพราะเราคู่กัน 2gether The Series EP.10 1/4 13:17-13:21
(コー キン ノイ)
※括弧書きは本記事の著者によるもの
コー キン ノイ
khɔ̌ɔ kin nɔ̀i
「キン」は「食べる」という意味の動詞です。第1回講義で出てきました。
この動詞が「コー+動詞+ノイ」=「〜させて(ください)」というフレーズで使われており、このセリフ全体で「食べさせて(ください)」という意味になります(俺にもくれよ(食べさせてよ)、というニュアンス)。
コー キン ノイ
khɔ̌ɔ kin nɔ̀i
食べさせて(ください)
| 単語 | 意味 |
|---|---|
| キン (kin) (กิน) | 食べる (動詞) |
おさらい|タイ語単語「コー(ขอ)」の使い方
タイ語講座応用編第3回の本記事では、タイ語の「コー(khɔ̌ɔ/ขอ)」を使った表現について見てきました。
さいごに、本講義のポイントを改めて確認します。
「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」+動詞+「ノイ/nɔ̀i/หน่อย)」:〜させてください
「コー/khɔ̌ɔ/ขอ」+名詞:〜をください
応用編第3回講義はここまでです。お疲れ様でした。
これまでの応用編講義は以下のリンクからどうぞ。
応用編第1回『名前と年齢の言い方』
応用編第2回『ペン(เป็น)とワイ(ไหว)を使った可能表現』
- 冨田竹二郎編『タイ日大辞典』(めこん)
- 宇戸清治編『パスポート初級タイ語辞典』(白水社)
- 三上直光著『タイ語の基礎』(白水社)
- 宇戸清治著『初級タイ語のすべて』(IBCパブリッシング)
- 赤木攻監修 中島マリン・吉川由佳著『間違いだらけのタイ語』(めこん)
- JittiRain著『2gether vol. 1 (เพราะเราคู่กัน 1) 』(everY)※電子書籍




